プーチン大統領が中国を公式訪問、依然として残る経済協力での課題
(ロシア)
調査部欧州課
2024年05月30日
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は5月16、17日の両日、通算任期5期目(2024年5月17日記事参照)の最初の外遊先として中国を公式訪問した。習近平国家主席と首脳会談に臨み、経済関係強化、原子力や宇宙分野での協力など2国間関係について意見を交わしたほか、ウクライナやパレスチナ情勢など国際関係についても議論した。
首脳会談後の共同記者会見で、プーチン大統領は「共同声明には両国関係発展の新たな課題と長期的な方向性が示されており、それらを達成することが今回の訪問に向け用意された一連の政府・省庁・企業間の各種の合意を実現することになる」と述べ、両国間の多方面での関係深化に対し自信を示した。
プーチン大統領はこのほか、経済面での成果として、a.2023年の2国間貿易が過去最高の2,400億ドルに達したこと、b.2国間決済でのルーブルおよび人民元の比率が90%に達したことを強調したほか、今後の双方向での投資の拡大にも期待を示した。対外政策や地域・国際協力に関する言及は、習国家主席に比べ相対的に少なかった。
その一方で、両国間の経済関係では首脳会談でも解決しきれなかった課題も残るようだ。例えば、米国の2次制裁を懸念する中国の銀行が中ロ間の取引の決済を拒否している問題では、ロシア科学アカデミー中国・現代アジア研究所のキリル・ババエフ所長は、現時点では問題解決には程遠い状況との見方を示す。ロシアにとって喫緊の課題であるガスパイプライン「シベリアの力2」の建設に関する2国間の協議については、両者の間に天然ガス価格見通しの乖離はあるものの徐々に縮小しており、近い将来、ガス供給契約が締結される可能性が高いと述べた(コメルサント5月21日)。
訪中の成果として、2国間包括パートナーシップ・相互戦略関係に関する共同声明を含む11文書が調印された。その一方で、今回の訪中には軍需を含む産業分野全般を所管するデニス・マントゥロフ第1副首相、第1副首相から転じたアンドレイ・ベロウソフ国防相など多くの閣僚が同行したことから、非公表の合意事項も多いとの見方も出ている(論拠と事実5月17日)。
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