米中AI協議を初開催、安全性とリスク管理を議論
(米国、中国)
ニューヨーク発
2024年05月17日
米中両政府は5月14日、スイスのジュネーブで人工知能(AI)に関して協議を行った。2023年11月のジョー・バイデン米大統領と中国の習近平国家主席の米中首脳会談(2023年11月16日記事、2023年11月17日記事参照)で、AIの安全性確保に関して2国間協議を行うことで合意していた。
米国国家安全保障会議(NSC)のエイドリアン・ワトソン報道官は5月15日、2国間協議について声明を発表した。それによると、米中両国は率直かつ建設的な議論を行い、AIの安全性とリスク管理に対する両国のアプローチについて意見交換した。米国側からは、発展途上国か先進国かを問わず、持続可能な開発のためにAIの恩恵を活用する重要性を強調したほか、その実現にはAIが安全・安心・信頼できるものであることを保証することが重要だと強調した。また、中国などによるAIの悪用について懸念を表明するとともに、中国との競争関係を責任持って管理するための重要な要素として、AIの安全性とリスクに関するオープンな対話を維持する必要性を確認した。
なお、国務省のアントニー・ブリンケン長官は5月6日に、AI技術を含めたハイテク分野の外交戦略について講演した中で、「イノベーションは地政学的競争相手との競争の核心にある」などと述べ、国家安全保障や外交面でのデジタル技術の重要性を強調している(2024年5月10日記事参照)。
米国連邦議会でも、AIのイノベーションの推進と技術流出防止措置の強化を求める動きがある。上院の超党派議員(注)で構成するAI作業部会は5月15日、AIに関する政策提言をまとめたロードマップを公表した。ロードマップでは、政権と上院に対して、AIのイノベーション推進などに向けて少なくとも年320億ドルの追加予算を割り当てるよう提言した。そのほか、AIがもたらす安全保障上のリスクを踏まえ、輸出管理規則の執行の徹底や、強力なAIシステムに追加的な輸出規制をかけるべき時期を判断するための枠組みの開発などを提言している。
(注)チャック・シューマー院内総務(民主党、ニューヨーク州)、マイク・ラウンズ議員(共和党、サウスダコタ州)、マーティン・ハインリッヒ議員(民主党、ニューメキシコ州)、トッド・ヤング議員(共和党、インディアナ州)。
(葛西泰介)
(米国、中国)
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