クイーンズランド州に国内初のグリーン水素電解槽製造工場が開設

(オーストラリア)

シドニー発

2024年04月15日

オーストラリア資源大手フォーテスキューは4月8日、クイーンズランド(QLD)州のグラッドストーンに水素を生成する電解槽の製造工場を開設したと発表した。国内初の、水素電解装置の商業規模での製造工場となる(州政府プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。電解槽は、水と再生可能エネルギー由来の電力からグリーン水素を製造するのに必要な設備だ。工場は、連邦政府と州政府から支援を受けて(注1)設立した。

工場は州による開発地区内の広さ1万5,000平方メートルで、プロトン交換膜(PEM)式電解槽スタック(注2)を製造する。工場の生産能力は、年間約2ギガワット(GW)となる見込みで、自動組み立て生産ラインを備える。フォーテスキューは電解槽のOEM生産(相手先ブランドによる製造)を行う予定。

今回の工場は、フォーテスキューが主導する「グリーンエネルギー製造(GEM)センター」の第1弾プロジェクトとなる。第2弾プロジェクト(以下、PEM50)は、50MWのグリーン水素製造施設の建設を予定している。PEM50では、2025年以降、年間最大8,200トンのグリーン水素製造を計画しており、自社で製造するPEM式電解槽を用いて、国内および輸出向けに水素を製造する。完成すれば、フォーテスキューにとっては初の商業規模でのグリーン水素製造施設となる。クイーンズランド州政府は同日、PEM50の開発を許可したと発表した。州政府は、グラッドストーンを再生可能エネルギーとグリーン水素の産業集積地とする狙いがあり、2つのプロジェクトの建設において240人、操業において93人の雇用が創出されると発表した。

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)によると、4月5日現在、国内に102件の水素・アンモニアプロジェクトがある。うち、開発中のプロジェクトが69件、建設中が18件、操業中が13件、完了1件、その他1件となっている。操業中のプロジェクトの水素・アンモニアの生産能力は、最大でも年間175トンと小規模なものにとどまっている。

(注1)連邦政府では、産業科学資源省が、製造業育成支援のための「近代製造イニシアティブコラボレーション・ストリーム」という予算から、4,490万オーストラリア・ドル(約44億9,000万円、豪ドル、1豪ドル=約100円)を拠出している。また、QLD州政府は、変電所や道路、通信、水道、用地を提供した。

(注2)グリーン水素を製造する電解槽の中核コンポーネント。

(青島春枝)

(オーストラリア)

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