2024年のGDP成長率、中東情勢を背景とした成長減速を懸念
(インドネシア)
ジャカルタ発
2024年04月30日
インドネシアでは、イランによるイスラエルへの大規模攻撃など緊迫する中東情勢を背景に、国内の複数の専門家から2024年のGDP成長率の政府目標である5.2%(注)の達成を懸念する意見が出ている。
インドネシア経済法律研究センター(CELIOS)のビマ・ユディスティラ所長は、中東情勢の悪化がインドネシア経済に与える影響として、「原油価格の急騰および燃料補助金に関する政府支出の増大、地政学的リスクの増大による外国投資の引き揚げおよび金や米ドルへの投資集中によるルピア安、インドネシアから中東、アフリカ、欧州への輸出の減少、原材料調達先の変更に伴う生産コスト上昇、金利の上昇」をあげた(「コンタン」4月17日)。同氏は、2024年のGDP成長率を4.6~4.8%と予測した。
バンバン・ブロジョネゴロ前財務相は、中東の治安情勢が今後さらに悪化もしくは長期化した場合には、2024年のGDP成長率は4.6~4.8%になる可能性があるとした。(「ジャカルタグローブ」4月15日)。
インドネシア経済改革センター(INDEF)のデジタル経済・中小企業センター長、エイシャ・マグフィルハ氏は原油価格の高騰に懸念を示し、「原油価格は、再度1バレル当たり90ドルに達する可能性があり(4月25日時点:87.77ドル、ブレント原油)、紛争が激化すればさらに高騰する恐れもある。今後の政府の燃料補助金の負担増と燃料価格の上昇に注意が必要だ」とした(「CNBCインドネシア」4月20日)。
なお、IMFは4月16日に発表した世界経済見通しでインドネシアの2024年の実質GDP成長率を1月の前回見通しから据え置き、5.0%と予測した。
インドネシア政府、イランとイスラエルに対して自制を求める声明を発表
インドネシア外務省は4月14日、X(旧Twitter)を通じて「インドネシアは中東の治安情勢の激化を強く懸念し、全ての関係者に自制を求める。また、インドネシアは国連安全保障理事会に対し、緊張緩和のために直ちに行動し、中東の平和創出に向けて努力を続けるよう求める」との声明を発表した。
(注)2024年のGDP成長率にかかる政府目標は、2023年法律第19号で規定された。
(八木沼洋文)
(インドネシア)
ビジネス短信 9e536dd55dea938b