3月の米個人消費支出、休暇前倒しで消費は増加も、インフレの高止まりに懸念

(米国)

ニューヨーク発

2024年04月30日

米国商務省は4月26日、3月の個人消費支出(PCE)を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

所得関連では、個人所得が名目ベースで前月比0.5%増と、市場予測と一致した。内訳をみると、雇用者報酬が0.6%増(寄与度0.4ポイント)、所得移転が0.3%増(0.1ポイント)、利息・配当が0.1%増(0.0ポイント)だった(添付資料図1参照)。

個人所得から税を除いた可処分所得は名目ベースで前月比0.5%増、実質ベースで0.2%増、1人当たりでは名目ベースで0.5%増、実質ベースで0.1%増だった。名目可処分所得の使途をみると、名目消費支出が0.8%増(寄与度0.8ポイント)、利払い費が2.0%増(0.1ポイント)、貯蓄が9.2%減(マイナス0.3ポイント)となっている。貯蓄率は3.2%と2022年10月以来の低い水準で、前月から引き続き、インフレや金利上昇が貯蓄を下押ししている状況だ(添付資料表1参照)。

名目消費支出は前月比0.8%増と、市場予測(0.6%増)を上回った。内訳をみると、財部門(寄与度0.4ポイント)ではガソリン(0.14ポイント)、食品(0.08ポイント)など、サービス(0.4ポイント)ではヘルスケア(0.12ポイント)、住居サービス(0.09ポイント)、金融サービス・保険(0.07ポイント)などが押し上げに寄与した(添付資料図2参照)。

物価を加味した実質ベースでの消費支出は前月比0.5%増だった。内訳をみると、財部門(寄与度0.4ポイント)ではガソリン(寄与度0.08ポイント)、食品(0.08ポイント)のほか、レクリエーショングッズをはじめとするその他耐久財(0.09ポイント)、サービス部門(0.1ポイント)ではヘルスケアサービス(0.11ポイント)、レクリエーションサービス(0.04ポイント)などが押し上げに寄与した(添付資料表2参照)。財・サービスともに押し上げ要因となったのは、主に行楽関連需要で、イースター休暇が例年より早かったことが影響した可能性が高そうだ。

物価関連では、PCEデフレーターは前年同月比2.7%増と前月(2.5%増)から加速したほか、食料・エネルギーを除くコア指数も2.8%増(2.8%増)と低下は足踏みした(添付資料図3参照)。なお、市場予測はPCE、コアいずれも2.6%増だった。内訳を見ると、ガソリン価格(2.5%増、寄与度0.1ポイント)が上昇しているほか、サービス価格(4.0%増、2.7ポイント)が高止まりした。サービス価格に関しては、エネルギー価格の上昇を受けて、輸送サービス(3.1%増、0.1ポイント)が上昇したほか、住居サービス(5.5%増、1.0ポイント)が高止まりしたことが主な要因となっている。賃金の状況が反映されやすいフードサービスやレクリエーションサービスなどを含むその他サービス(4.1%増、1.1ポイント)の伸びはわずかに低下している(添付資料表3参照)。

今回の結果を含め、2024年初来インフレが高止まり、ないし再加速する兆しがあり、バークレイズのグローバル調査チェアのアジェイ・ラジャディヤクシャ氏が「米国のインフレは過去3カ月で急速に上昇し、連邦準備制度理事会(FRB)に打撃を与えた」と述べているように(「フィナンシャル・タイムズ」紙電子版4月26日)、FRBが3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で示した経済見通し(2024年3月22日記事参照)の軌道からは外れつつある。FRBのジェローム・パウエル議長をはじめ、多くのFRB理事が最近の経済指標を受けてタカ派寄りの発言を行っており、利下げ開始時期は年後半にずれ込む可能性が高そうだ。

(加藤翔一)

(米国)

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