米エネルギー省、産業脱炭素化に向けて鉄鋼関連プロジェクトに約15億ドルの投資を発表

(米国)

ニューヨーク発

2024年04月03日

米国エネルギー省(DOE)は3月25日にエネルギー集約型産業の脱炭素化や産業における温室効果ガス(GHG)排出量の削減などを目的とした33プロジェクトに、最大60億ドルを拠出すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(2024年3月29日記事参照)。選定されたプロジェクトのうち、15億840万ドルが拠出される見込みの鉄鋼関連の主なプロジェクト概要は次のとおり。

  1. 水素燃料によるゼロエミッション製鉄プロジェクト(アイオワ州:連邦拠出5億ドル):水素による直接還元鉄(DRI)製造技術を有する世界初の商業規模の製鉄所を建設する。この製鉄所では、洋上風力タービンなどにも適した鋼種も製造する。化石燃料にかわって水素を活用することで、製造工程で81%の炭素排出量削減を見込む。また、本プロジェクトにより製造業などで540人、建設業で6,000人の雇用創出を見込む。
  2. 水素対応DRIプラントおよび電炉設置プロジェクト(オハイオ州:連邦拠出5億ドル):2基の電炉や水素にも対応したDRIプラントの設置により、自動車向け圧延鋼板などの製造において、年間100万トンのGHG排出量の削減につなげる。本プロジェクトにより製造業などで170人、建設業で1,200人の雇用創出を見込む。
  3. ライトウェイ次世代融解プロジェクト(アラバマ州:連邦拠出7,500万ドル):鋳造のためにコークスを使用するキュポラ炉を4つの電磁誘導炉に置き換えることで、溶解工程の二酸化炭素(CO2)排出量を95%削減することを見込む。本プロジェクトでは水道管などを製造する。
  4. 鉄の電気誘導化プロジェクト(アラバマ州:連邦拠出7,550万ドル):天然ガスとコークスを使った炉を電気溶解炉に置き換えることで、CO2排出量を73%削減することを見込む。本プロジェクトでは鉄パイプなどを製造する。本プロジェクトにより、36人の従業員がより熟練度の高い高賃金の職務につくほか、220人以上の雇用創出を見込む。
  5. 低排出、冷間成型鉄鉱石ブリケット生産プロジェクト(メキシコ湾岸:連邦拠出2億8,290万ドル):従来の鉄鉱石ペレット製造法よりも低排出で加工できる技術を実装することで、CO2排出量を60%削減することを見込む。本プロジェクトにより、製造業などで200人、建設業で1,000人以上の雇用創出を見込む。
  6. 鉄鋼スラブ電気誘導加熱炉アップグレードプロジェクト(ペンシルベニア州:連邦拠出7,500万ドル):モーターなどに使用される高シリコン電磁鋼板を製造する生産設備を電化し、エネルギー損失を最小限に抑え、温度を正確に制御できる加熱方法を導入する。これにより、再加熱炉に関連するGHGの直接排出量を100%削減することを見込む。

(加藤翔一)

(米国)

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