マレーシアと韓国、自由貿易協定の交渉再開へ

(マレーシア、韓国)

調査部アジア大洋州課

2024年04月22日

マレーシアの投資貿易産業省(MITI)と韓国の産業通商資源部は3月26日、マレーシア・韓国自由貿易協定(MKFTA)の交渉を再開すると発表した(マレーシア側発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)韓国側発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。MKFTA交渉は2019年9月に行われた第3回交渉以降、延期されていたが、4年半ぶりの再開宣言となった。

両国間には既に、ASEAN韓国自由貿易協定(AKFTA)と地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が存在するが、MKFTAでは、これまで交渉を進めていた物品貿易だけでなく、デジタル経済、グリーン経済、サプライチェーン、バイオエコノミーなどの分野もカバーし、より包括的な内容の協定を目指す。

MITIによると、マレーシアの韓国との貿易額は2023年に1,111億リンギ(約3兆5,552億円、1リンギ=約32円)で、国・地域別で8番目に大きかった。マレーシアから韓国への主な輸出品目は、電気・電子製品、液化天然ガス(LNG)、石油製品、金属製品、光学・科学機器だ。韓国からの主な輸入品目は、石油製品、電気・電子製品、化学品・同製品、機械、装置・部品、鉄鋼製品となっている。

投資の面では、韓国はマレーシアの製造業投資で主要な投資元の1つだ。韓国によるマレーシアでの投資実行額累計は2023年12月時点で400億リンギ(390件)に上り、4万8,374人の雇用を創出している。主な投資分野は、化学品・同製品、卑金属、電気・電子、石油製品、食品の製造で、マレーシアで操業する韓国企業の数は500社ほどだと見込まれる。一方、マレーシアから韓国への投資額は2023年第3四半期(7~9月)時点で4,820万リンギで、投資分野は電子製品、鉄鋼製品、石油化学製品などの製造、建設、ITサービス、卸売り・小売り物流などとなっている。

今回の発表を受けて、アズミン・アリ元国際貿易産業相(注)は交渉再開に慎重な姿勢を示し、費用便益分析の実施と公表を求めた。アズミン氏は、2019年のMKFTA交渉で両国が関税撤廃率92%を目指すことで一致した一方、既存のAKFTAで韓国側の関税撤廃率が91%、マレーシア側が83.5%であることを踏まえると、MKFTAではマレーシア側により多くの品目で譲許することが求められると指摘した。これに対して、テンク・ザフルル・アジズ投資貿易産業相は、交渉再開前にMITI内でFTAの便益について検討が行われ、交渉再開は閣議でも合意済みとした。また、マレーシアのセンシティブ産業に対する要求を韓国側が緩和することで同意したことが交渉再開を後押ししたとし、韓国への感謝の意を表した。

(注)2023年4月に国際貿易産業省から投資貿易産業省に改称された。アズミン氏はザフルル投資貿易産業相の前任に当たる。

(山口あづ希)

(マレーシア、韓国)

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