米新車販売、第1四半期は電動車が押し上げ、前年同期比4.7％増

モーターインテリジェンスの発表（4月2日）によると、米国の2024年第1四半期（1～3月）の新車販売台数（暫定値）は、前年同期比4.7％増の376万363台となった。新型コロナウイルス禍前の2019年同期比では、6.0％減にまで回復した（添付資料表1参照）。全車のうちガソリン車は1.4％増にとどまったものの、電動車（注1）が23.3％増となり、伸びの7割以上を占めた。

市場調査会社のJDパワーによると、在庫の回復に伴い、車両価格は下落する傾向にある。3月の平均販売価格は4万4,186ドルで、前年比3.6％減、3月としては過去最大の下落幅となった（CBSニュース4月3日）。なお、売り上げ在庫比率（販売台数に占める在庫台数の割合）は、前年同期より58.1ポイント増えて199.6％にまで伸びた。

部門別に見ると、乗用車が前年同期比0.7％増の75万818台、小型トラックが5.7％増の300万9,545台だった。全新車販売に占める小型トラックのシェアは第1四半期としては最多の80.0％で、消費者の小型車志向が続いている。

主要メーカー別に見ると、ゼネラルモーターズ（GM）は「アカディア」など中型のスポーツ用多目的車（SUV）や、「ボルト」など小型バッテリー式電気自動車（BEV）が落ち込み、前年同期比1.5％減の59万55台、トヨタはSUV「RAV4」、SUV「グランドハイランダー」が押し上げて、20.3％増の56万5,097台だった（添付資料表2参照）。同社は増加台数で首位となり、その8割以上をハイブリッド車（HEV）が占めた。フォードはピックアップトラック「マーベリック」、SUV「エスケープ」が伸びて、7.0％増の50万4,815台、ステランティスはSUV「チェロキー」、ピックアップトラック「ラム」が減少し、9.7％減の33万4,241台に落ち込んだ。ホンダはSUV「CR-V」、乗用車「シビック」が押し上げて、17.3％増の33万3,824台、日産は乗用車「セントラ」、SUV「ローグ」が好調で、7.2％増の25万2,735台、現代はSUV「パリセード」、SUV「コナ」が伸びて、0.7％増の19万9,581台だった。起亜は乗用車「リオ」、乗用車「K5」が減少し、2.5％減の17万9,621台、スバルはSUV「フォレスター」、乗用車「アウトバックワゴン」が押し上げて、6.7％増の15万2,996台、電気自動車（EV）メーカーのテスラは乗用車の「モデル3」が大幅に減少、SUV「モデルX」も落ち込んで、13.3％減の14万187台となった。テスラの前年同期比減は2020年第3四半期（7～9月）以降初めて。フォルクスワーゲン（VW）は乗用車「ジェッタ」、SUV「アトラス」が伸びて、4.8％増の12万8,049台だった。

好調な電動車の中でも、ハイブリッド車のシェア増加

新車販売台数のうち、電動車は前年同期比23.3％増の66万4,889台となった。そのうち、HEVは45.1％増の32万2,743台、クリーンビークル（注2）は8.0％増の34万2,146台、BEVは2.7％増の26万8,175台だった（添付資料表3参照）。全車販売台数に占めるシェアを見ると、BEVは前年同期比0.1ポイント減の7.1％、PHEVは0.4ポイント増の2.0％、HEVは2.4ポイント増の8.6％だった。BEVに占めるメーカー別シェアを見ると、販売台数で首位のテスラは前年同期比9.6ポイント減少して、52.3％に低下（添付資料表4参照）。一方で、SUV「R1S」が伸びたリビアンや、ワールド・カー・オブザイヤーを受賞したSUV「EV9」が好調な起亜、メルセデス・ベンツ、現代がシェアを伸ばした。

新車販売市場の見通しに関して、JDパワーのトーマス・キングデータ分析部門責任者は、ディーラーでの在庫は改善するものの、価格低下による競争の高まりがメーカーやディーラーでの収益を圧迫すると危惧した（全米自動車ディーラー協会4月2日）。また、自動車関連サービス企業のコックスオートモーティブのジョナサン・スモークチーフエコノミストは「金利は依然として24年ぶりの高水準に近く、消費者は連邦準備制度理事会（FRB）による年後半の利下げに期待しているため、購入を急ぐ必要性を感じていない」とし、新車販売市場が既に春のピークに達したようだと警告（CBSニュース4月3日）。1年のうち販売のピークの第2四半期（4～6月）にかけての先細りを示唆した。

（注1）ハイブリッド車（HEV）、バッテリー式電気自動車（BEV）、プラグインハイブリッド車（PHEV）、燃料電池車（FCV）の総称。

（注2）BEV、PHEV、FCVの総称。

（大原典子）