米コロンビア大など、校内での反イスラエル主義の抗議活動に対応

(米国)

ニューヨーク発

2024年04月30日

米国の幾つかの私立大学で、パレスチナ自治区ガザ地区での軍事衝突に反対する学生などによる抗議活動が相次いでいると各種メディアが報じた。ニューヨーク(NY)市のコロンビア大学では4月17日から、大学に対してイスラエルへの経済的・学術的投資を止めることを求める学生が学内の芝生にテントを張って野営し、抗議活動をしている。

ネマト・シャフィク学長が翌18日、ニューヨーク市警(NYPD)に野営地の撤去を依頼したと発表し、米主要メディアによると、NYPDは同日、大学のキャンパスで抗議する学生を含む108人を逮捕した。大学側は24日に、学生が大部分のテントを解体することや、コロンビア大学の学生のみが抗議活動に参加すること、野営している学生はNY市消防局(FDNY)の要求事項を順守すること、差別的な発言を禁止して全ての人を受け入れる抗議活動にすることを条件として、抗議活動を24日未明発表時点から48時間続けることに同意したと発表した。

同大学で抗議活動が開始された前日の4月16日には、シャフィク学長が構内での反ユダヤ主義活動に関して意見を発表し、その内容を17日に連邦議会下院教育・労働委員会の公聴会で証言すると述べていた(注)。シャフィク学長の発表内容は、言論の自由は守られるべきだが、どんな民族であってもその民族の大量虐殺を呼びかけることは大学にはふさわしくないとした上で、連邦最高裁さえも、憲法修正第1条の下での言論の自由の限界を定義するために、2世紀以上にわたって苦闘してきた。大学が一晩に解決できることを期待しないでもらいたいというものだった。

そのほか、ニューヨーク大学(NYU)は4月22日、大学構内でNYUの学生が大学の許可なしに抗議活動を行っていたところ、NYUの学生ではない参加者がバリアを突破したことや、威圧的な掛け声を発したり、反ユダヤ主義的な行為が報告されたりしたため、安全上の理由からNYPDに支援を要請したと発表した。米主要メディアによると、NYPDは150人以上を逮捕した。NYUの教授で、抗議活動をする学生をサポートしていたデービッド・ラデン氏によると、NYUの抗議活動も「ガザ地区での大量虐殺に鑑み」、大学に対してイスラエルへの支援を停止するよう要求したものだという。

米北東部ではほかに、マサチューセッツ州ボストン市にあるエマーソン大学で4月25日、同様の理由で抗議する参加者にボストン市警が対応し、100人以上を逮捕した。そのほか、コネティカット州のイェール大学で4月17日、学生が大学に対して抗議活動をした。理由は、同大学が大学基金の投資方針を拡大し、一般消費者向けに小売りを行う銃器メーカーに関連した株の保有を禁止するとしたものの、軍事兵器メーカーに関連するものは禁止の基準を満たしていない(すなわち投資を続ける)と発表したためだった。イェール大学は22日、キャンパス警官によって47人の学生を逮捕したと発表した。こうした動きは全米に広がっている。

背景については、ジェトロの「特集:イスラエルとハマスの衝突に関する動き、各国の反応」を参照。

(注)2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃の後、大学での反ユダヤ主義の活動が目立ち、コロンビア大学を含む幾つかの米国の大学の代表は、下院教育・労働委員会の公聴会で、構内での反ユダヤ主義活動について証言することを求められていたため。なお、NY市を拠点とするユダヤ人擁護団体の名誉棄損防止同盟(ADL)の調査によると、2023年に始まった学年度1年間で、反ユダヤ主義からの差別を経験した、または目撃したと答えたユダヤ系大学生は73%だった。

(吉田奈津絵)

(米国)

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