発酵科学で食品加工をアップサイクルするノルウェー企業、北海道に進出

(北海道、日本、ノルウェー)

北海道発

2024年04月30日

ノルウェーのオスロに本社を置く発酵科学のスタートアップ企業のNorwegian Mycelium AS外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〔NoMy(ノーミー)〕は4月22日、日本市場への進出に当たり、北海道札幌市にノーミージャパン合同会社の設立を発表した。

ノーミーは菌類を用いて、食品加工のプロセスで生じる副産物を高タンパク源となる菌糸体プロテインに転換し、食品や飼料など付加価値性の高い商品を製造する技術を提供する。類似の技術では原料となる副産物の栄養価が不足し、砂糖などの添加物で補う必要がある。ノーミーはプロセスから生成される他の副産物を配合・組成することによって十分な栄養価を確保しつつ、副産物の廃棄量を極限まで減らし、菌糸体プロテインの製造原価を下げることができるのが特徴だ。

ノーミージャパンの代表を務めるデービッド・アンドリュー・クイスト氏は札幌市に拠点を設置した理由について、「北海道は、日本の最も重要な食の生産地の1つで、食品加工業が数多く、交通インフラも充実している」ことを挙げた。同社は、食品加工で出る副産物ごとにカスタマイズした技術を提供できることも強みだ。食品加工業者が通常の工程で見落としている可能性を発見し、新製品の開発支援も行っている。バイオマス原料が豊富な北海道は「将来必要とされる食品システムの変革を支援する」という同社のビジョンを実現する適地といえる。加えて、「STARTUP HOKKAIDO」(注)に代表されるスタートアップ支援が充実している点も魅力的と述べた。

北海道への進出を後押ししたのは、ビジネスパートナーの存在もある。ノーミーは日本拠点設置の発表と併せて、日本甜菜製糖(日甜)との戦略的提携を発表した。日甜は二酸化炭素(CO2)吸収能力の高い砂糖原料のテンサイを活用した新産業創出に取り組んでいる。ノーミーの技術を用いて製糖工程の副産物の菌糸体タンパク質への転換について、技術開発を進める。クイスト氏は「テンサイ生産の仕組みから、より多くの価値を引き出すという日甜の環境的・経済的目標に協力できる」と語った。

ノーミーは、2024年1月末から2月初めにかけて札幌市を中心に開催された国際的なスタートアップカンファレンス「HOKKAIDO INNOVATION WEEK」(2024年2月13日記事参照)に参加し、道内企業や関係者との関係構築を行った。また、十勝地域で開催された同カンファレンスの関連イベント「Tokachi Innovation Caravan」(2024年2月14日記事参照)にも参加。同地の生産者と面談し、生産現場を視察するなど、北海道でのビジネス拡大に向けた取り組みを強めている。

写真 Tokachi Innovation Caravanプログラムでピッチするクイスト氏(ジェトロ撮影)

Tokachi Innovation Caravanプログラムでピッチするクイスト氏(ジェトロ撮影)

(注)北海道、札幌市、北海道経済産業局によるスタートアップ推進組織。2023年9月に設立。2024年1月、Hokkaido Innovation Weekを開催。

(深田保志子)

(北海道、日本、ノルウェー)

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