中国、国家秘密保護法を改正、党の指導と関連部門の権限を強化

(中国)

北京発

2024年03月01日

中国は2月27日、国家秘密の扱いを定めた「国家秘密保護法」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの改正を可決した。5月1日から施行される。同法は1988年の制定後、2010年に続いて2度目の改正となる。

改正により、共産党による指導と関連部門の権限が強化された。改正後の第3条では、「秘密保護業務に対する中国共産党の指導を堅持する」との文言が盛り込まれ、第4条では、習近平国家主席の提唱する「総体国家安全観」(注)を堅持すると明記された。

第15条では、国家機密の範囲およびその秘密レベルについて、秘密保護に関する行政部門が単独で決定することが可能となった。改正前は、外交、公安、国家安全などのその他の行政部門とともに決定するとされていた。同時に、決定にあたっては、必要性・合理性の原則と、科学的論証・評価を順守し、状況の変化に応じ変更しなければならないとした。

第33条では、雑誌やテレビ、映画に加えて、ネット上の情報の制作、複製、発信、伝播(でんぱ)にあたっても規定を順守するよう明記された。また、34条では、ネットワーク運営者に対して、ユーザーが発信する情報の管理を強化するとともに、行政部門による調査への協力などが義務付けられた。

海外への流出防止も強化された。第37条では、中国の組織・機関が、中国外の組織・機関もしくは中国外から中国内に設立された組織・機関に国家秘密を提供する場合や、任用・雇用した中国外の人員が業務上の必要性から国家秘密を知った場合は、国の規定に基づき手続きをするとした。また、第46条では、国家秘密に関わった職員について、離任・離職後も「秘密離脱期間」管理を実施し、期間内の就業・出国を制限する。また、同期間終了後も秘密保持義務を負うとした。

その他、第9条では、国家秘密保護教育を学校教育などの国民教育システムや公務員教育システムに盛り込むとともに、メディアによる社会全体に向けた宣伝・教育を奨励するとした。第10条では、秘密保護に関わる科学技術研究・応用を支援し、イノベーション能力を向上するとともに、関連の知的財産権を保護するとした。

国家秘密保護局の李兆宗局長は今回の改正について、2024年2月28日付の人民日報で「公開されるべき情報が公開されず、公開されるべきでない情報が公開されることはいずれも国家と人々の利益を損なう」として、法律に基づいた適切な情報の公開、保護が重要だとした。

(注)2014年に習近平総書記(国家主席)が提唱。政治、国土、軍事、経済、文化、社会、科学技術、情報、生態系、資源、核、海外での権益、宇宙、深海、極地、バイオ、人工知能、データなど幅広い分野の安全を包括する。2015年施行の「国家安全法」でも、同概念を堅持することが明記されている。

(河野円洋)

(中国)

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