タイへの外国直接投資は活況、工業用地確保も迅速な意思決定が重要

(タイ)

調査部アジア大洋州課

2024年03月28日

タイ投資委員会(BOI)による2023年の外国直接投資の認可額は前年比71.7%増の約5,590億バーツ(約2兆3,478億円、1バーツ=約4.2円)だった(2024年2月20日記事参照)。ジェトロがCEICの資料を調べたところ、この投資認可額は、統計をさかのぼることができる1995年以降、2番目に高い水準で、5,000億バーツを超えたのは2012年以来11年ぶりとなった(添付資料図1参照)。

外国企業による投資認可額の推移を国・地域別にみると、日本は長きにわたりタイにとって最大の投資相手国だったことが分かる。1995年から2023年の累計投資認可額に占める日本のシェアは36.0%と最も大きい。2023年は中国が首位となったほか、シンガポール、米国などの主要投資相手国の認可額も歴史的に見ても高い水準となり、日本は4位に後退した。中でも中国は2010年代後半から投資額が拡大し、主要投資国として目立ち始めている。

外国直接投資の拡大に比例して、工業団地の開発も活況だ。タイの工業団地開発最大手の1つのWHAは、入居企業への土地販売契約面積が1,984ライ(317万4,400平方メートル)で、2013年(1,995ライ)に次ぐ規模となった。WHAへの入居企業数に占める国籍別シェアについて、2023年12月時点では、全体で見ると日本が28%と最も多いものの、2019~2023年の契約件数は中国が59%を占め、最多だった(添付資料図2参照)。入居企業の業種は全体では自動車が32%と最も多いが、2019~2023年の契約件数は消費財が29%を占め、自動車を上回った(添付資料図3参照)。タイでは政府のEV振興策の後押しもあって中国系EVメーカーの進出が活発だが、同社の運営する工業団地にはBYDをはじめ中国系EVメーカー4社が入居する。また、消費財は米中貿易摩擦をきっかけに、米国向けの輸出品を生産する中国企業の進出が加速している。

WHAの日本人営業ディレクターの湯浅謙一氏はタイの投資環境について、電力などのインフラの安定性、投資奨励を得た場合は外国企業でも土地の取得が可能なこと、また、グローバルな地政学的緊張の高まりの中でタイがリスク分散先として評価されているとみる。特にリスク分散をいち早く進めたい中国企業や欧州企業などは、工業用地の確保においても意思決定が早いという。

(山口あづ希)

(タイ)

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