オーストラリア、ビジネス負担軽減策として、約500品目の輸入関税撤廃策を発表

(オーストラリア)

シドニー発

2024年03月25日

オーストラリアのジム・チャルマーズ財務相とドン・ファレル貿易・観光相らは3月11日、輸入関税改革を連名で発表した。2024年7月から約500品目(タリフラインの14%に該当)の一般税率について、一律に関税撤廃を実施する。

目的は、貿易手続きの簡素化を行い、関税に関する貿易事務コスト軽減することで利便性を向上させ、企業、特に中小企業のビジネス生産性を上げるため。オーストラリアは日本を含むさまざまな国と既に自由貿易協定(FTA)を締結、多くの輸入品目では関税が削減されている一方で、国内企業は自社の輸入品がどの関税譲許品目に該当するかの確認・証明に多くの時間やコストを費やされ、時にはそのコストが小売価格に転嫁されていることを現在の課題として挙げた。

政府は今回の関税撤廃で、毎年3,000万オーストラリア・ドル(約30億円、豪ドル、1豪ドル=約100円)以上の企業の貿易手続きの事務コストを削減できるとした。財務省のプレスリリースでは、関税撤廃対象品目の例として、洗濯機、冷蔵庫などの家電製品、農業用トラクターのタイヤなど工業製品、歯ブラシや竹製の箸などの日用品まで挙げている。例えば、洗濯機(HS8450)の一般税率は現在5%だが、0%となる。対象全品目は5月に発表する予算案で最終的に示す。政府は今回の品目の選定に当たり、国内産業に悪影響を及ぼす品目や、FTAでのセンシティブ品目は対象外とする。7月実施に向けて、財務省は制度に対する意見や対象品目に関するパブリックコンサルテーションを4月1日まで行っている(注)。

政府の発表を受けて、経済団体のビジネス・カウンシル・オーストラリア(BCA)やオーストラリア産業グループ(Aiグループ)は政府案を支持するプレス声明を発出した。一方で、小売価格の引き下げにつながる効果については懐疑的な見方もあり、オーストラリアの家電・家具販売大手ハービー・ノーマンのゲリー・ハービー取締役会長は、関税が撤廃されるのは良いことだが、(多くはFTAの効果で関税がそれほど高くない現状に鑑みると)今回の措置で国内の消費者は価格が安くなることは期待していないのではないか、政府はビジネス環境の整備にもっと力を入れてほしいと述べた(「オーストラリアン」紙電子版3月11日電子版)。

(注)コンサルテーションペーパーは、財務省のホームページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに3月11日付で発表された。

(青島春枝)

(オーストラリア)

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