EVの新車登録台数、ディーゼル車を上回る

(オーストリア)

ウィーン発

2024年02月08日

オーストリア統計局が1月11日に発表した2023年の乗用車の新車登録台数統計によると、電気自動車(EV)は前年比39.4%増の4万7,621台となり、初めてディーゼル車(前年比3.2%減、4万6,568台)を上回った。新車登録台数のうち、内燃機関車のシェアがまだ過半数を占めたものの、代替動力車のシェアは48.2%まで上昇した(添付資料表1参照)。

EVの新車登録台数をメーカー・ブランド別でみると、テスラは8,417台(前年比55.6%増、シェア17.7%)で1位となり、BMWは5,846台(84.9%増、シェア12.3%)で前年3位から2位に上がった(添付資料表2参照)。フォルクスワーゲン(VW)は5,127台で4.9%減(シェア10.8%)となったが、シュコダ(87.2%増、シェア7.9%)、アウディ(52.2%増、シェア6.4%)、クプラ(12.9%増、シェア5.6%)を含むVWグループ(注1)では約3分の1を占めた。韓国の現代と起亜はそれぞれ7位と10位になった。中国の上海汽車により買収された英国発祥のブランドMGは、EVのSUV(スポーツ用多目的車)モデルなどで登録台数を前年より2倍以上に増やし、シェア4.3%で9位に上がった。そのほか、BYD(比亜迪)とBAIC(北京汽車)が中国のEVメーカーとしてオーストリアでも存在感を高めている(注2)。

EVのモデル別では、1位はテスラ「Y」が前年比38.6%増の6,039台だった。上位10位にはシュコダ「エンヤク」、クプラ「ボーン」、VW「ID.4」、アウディ「Q4」、VW「ID.3」と、VWグループのモデルが5つ入った(表3参照)。日本メーカーのモデルは上位40位内に1つも入っていない。

EVの新車登録台数が初めて1,000台を超えた2014年以降、新車登録台数に占めるEVのシェアは0.4%から2023年には19.9%に上昇した(添付資料図1参照)。一方、乗用車登録の累積台数をみると、EVのシェアは2014年の0.1%から2022年の2.1%とわずかに拡大したのみだった(添付資料図2参照)。堅調な伸びではあるものの、政府の2040年のカーボンニュートラル(炭素中立)目標を達成するためにはペースが遅い。

欧州会計検査院(ECA)は2024年1月25日に発表した、自動車による二酸化炭素の排出削減に関するレポートで、EUの2030年および2050年の気候目標達成に向けたEVの役割を強調し、さらなる普及の加速を提言している(2024年1月31日記事参照)。しかし、オーストリアでEV普及が順調に進まないのには、次のような原因があるといわれている。(1)内燃機関車よりも高い販売価格。2023年に新車登録されたEVの8割は社用車で、個人は2割に過ぎないことからも、個人購入には経済的な障壁があると考えられる。(2)充電スタンドの不足。充電スタンドの数は2021年から倍増して2万基を超えたが、都市部以外ではまだ供給が不十分。(3)充電スタンドの料金や支払い方法が不透明。(4)EVの航続距離の短さ。(5)EVのメンテナンスコスト、特にバッテリー交換費用が高い。

オーストリア政府は2024年にも、Eモビリティの拡大支援のため1億1,450万ユーロの補助金を支給する予定だ。個人によるEV1台の購入に5,000ユーロまで、充電設備設置に600ユーロまで、電動オートバイ1台の購入に2,300ユーロまで補助する。(特に中国からの)EVメーカーの進出による価格競争で内燃機関車との価格差が小さくなる、と欧州自動車工業会(ACEA)は予測する(「デア・スタンダード」紙1月7日)。また、ドイツの自動車関連シンクタンクのCAR(Center Automotive Research)のヘレナ・ウェスベルト所長は、オーストリアでのEVの販売は2024年にも2桁で伸びると予想している(「デア・スタンダード」紙1月7日)。

(注1)VWグループは上記4つのブランドのほか、セアト、ポルシェ、ベントレー、ランボルギーニ、ドゥカティからなる。

(注2)スウェーデンのボルボ・カーズも中国企業に買収され、ボルボとポールスターというブランドでEVを製造している。

(エッカート・デアシュミット)

(オーストリア)

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