サウジアラビア政府が地域統括会社への税制インセンティブの詳細を発表

(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、湾岸協力会議(GCC))

リヤド発

2024年02月22日

サウジアラビア政府は2月16日、官報(Umm Al-Qura)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで「地域統括会社(RHQ)に関する税規則」(以下、本規則)を発表した。政府は2023年12月5日に、RHQを対象に法人税や源泉所得税に係る税制インセンティブを発表したが、RHQが免税の恩恵をいかに享受できるかを明らかにしておらず、企業関係者の混乱を招いていた(2023年12月7日記事参照)。本規則で明確化された主なポイントを紹介する。

まず、新たな税制インセンティブはRHQのみに適用され、配下の事業会社などには適用されないことが明記された(第2条)。後述するRHQへの法人税減免について、配下の事業会社との損益通算可否が関心を集めていたが、同可能性は否定された。また、本規則による特段の規定がない場合、RHQには通常の企業税制が適用される(同条)。

インセンティブとともに罰則規定も明らかに

本規則で定められた税制インセンティブの内容は次のとおり(第3条、第4条)。

  1. 法人税率0%〔ただし、RHQに認められる事業(注)に係る所得に限る〕
  2. 源泉所得税率0%(ただし、RHQから非居住者に支払われる配当、非居住者の関係法人への支払い、RHQが活動する上で必要なサービスに対する非居住者の非関係法人への支払いに関するもの)
  3. 税制インセンティブの適用期間は30年間(更新あり)

本規則では、RHQの経済的実態の要件として、RHQライセンスの保有とライセンスが認める活動の順守、活動を実施するために適した施設の保有、国内での取締役会開催を含む経営(の実態)、国内での事業支出、RHQに認められる事業による収益、最低1人の常駐取締役の配置、適切な数の常勤従業員の雇用と、適当な専門性や技能を有する人材の配置などが規定された(第5条)。

RHQが本規則を満たさない場合の罰則規定も定められた(第11条)。監督権を有する投資省の勧告後90日の間に是正が認められないと、10万リヤル(約400万円、1リヤル=約40円)の罰金が科される。同罰金後、続く90日の間に是正が見られない場合、または3年間に同様の違反が再度確認される場合、40万リヤルの罰金が科される。

本規則は官報が発表された2月16日から施行された。

(注)RHQライセンスで認められる事業内容は、a.戦略立案、b.域内マネジメント、c.支援業務に限られる。戦略立案には、地域戦略策定・監督、戦略調整、製品・サービス配備、投資支援、財務レビュー、域内マネジメント機能には、事業計画策定、予算編成、事業調整、マーケティング、事業・財務報告がそれぞれ含まれる。また、支援業務には、次のものが含まれる。(1)販売およびマーケティング支援、(2)人事・人事管理、(3)研修、(4)財務管理、外国為替・資産管理、(5)コンプライアンスおよび内部監査、(6)会計・経理、(7)法務、(8)監査、(9)調査・分析、(10)アドバイザリー、(11)運営管理、(12)物流・サプライチェーンの管理、(13)国際取引、(14)テクニカルサポート、エンジニアリング支援、(15)ITネットワーク運用、(16)研究開発、(17)知財管理、(18)生産管理、(19)原材料・部品調達。詳細は、「投資省サービスマニュアル外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の3.19項(35~36ページ)を参照のこと。

(秋山士郎)

(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、湾岸協力会議(GCC))

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