米国際貿易委、関税法332条に基づくコメの国際競争力と米国産業への影響調査開始
(米国、バングラデシュ、ブラジル、中国、インド、インドネシア、パキスタン、パラグアイ、タイ、ウルグアイ、ベトナム)
ニューヨーク発
2024年02月29日
米国国際貿易委員会(ITC)は2月28日、1930年関税法332条に基づき、コメに関する国際競争力と貿易、米国産業への影響調査を2月23日に開始したと明らかにした。
ITCは関税法332条に基づき、米国と外国の産業間の競争条件を含め、関税や貿易に関するあらゆるテーマについて調査を行う権限が与えられている。調査は大統領や上院財政委員会、下院歳入委員会(注)、米国通商代表部(USTR)から要請があった場合に開始できるほか、ITCが独自に始めることもできる。調査期間はITCが独自に定められるが、法律の定めなどによって要請者から指定されることもある。調査結果は要請者に提出され、安全保障上の理由がない限り、通常は一般に公開される。なお、ITCは調査結果に基づく勧告などは行わない。
今回は、歳入委員会のジェイソン・スミス委員長(共和党、ミズーリ州)の要請によって調査が始まった。スミス委員長は2月5日に「外国の不当な補助金やそのほかの政策が、2013年の22億ドルから2022年には17億ドルという過去10年間の米国のコメ輸出減少に寄与していると強く疑っている」「公平な競争条件が与えられれば、米国のコメ生産者は世界中でより多くの消費者を得られ、より多くの米国人の雇用を支えられる」として、ITCのデビッド・ヨハンンソン委員長へ332条調査を要請していた。歳入委員会は過去にも、2009~2013年の期間を対象に同様の調査をITCに要請しており、ITCは調査結果を2015年に公表している。2015年版調査では、政府介入が世界のコメ市場の貿易と価格の動向に他の農産物以上に影響を与えていることや、関税などの貿易制限措置が米国のコメの輸出競争力に対する最大の課題であることなどを報告している。今回の調査はこのアップデートとなり、スミス委員長がヨハンンソン委員長に宛てた書簡によると、次のことに焦点を当てて調査を行う。
- 米国のコメ産業と、バングラデシュ、ブラジル、中国、インド、インドネシア、パキスタン、パラグアイ、タイ、ウルグアイ、ベトナムなど世界の主要なコメ生産・輸出国の最近の動向。
- 米国内外の輸出入に影響を与える世界のコメ市場の貿易動向。
- 主にコスト、製品の差別化、サプライチェーンの信頼性に影響を与える米国と外国のコメ生産者の競争優位性と弱点。
- 既存の政策やプログラムがコメの生産と輸出に直接的、間接的に与える影響について定性的、定量的評価。これには、輸出規制のような政策が米国のコメの生産と価格、発展途上国の食料安全保障に与える影響を含む。
- 他の主要なコメ生産国による米国や米国の輸出先国への輸出が米国のコメ産業に与える影響。
スミス委員長は13カ月以内に調査を終えるよう要請しており、2025年春までには調査結果が公表される見込みだ。ITCは4月30日に公聴会開催を予定している。
(注)連邦議会で上院の財政委員会と下院の歳入委員会が通商を所管する。
(赤平大寿)
(米国、バングラデシュ、ブラジル、中国、インド、インドネシア、パキスタン、パラグアイ、タイ、ウルグアイ、ベトナム)
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