ジェトロ、ウクライナとポーランドのメドテック企業のピッチイベント開催
(ウクライナ、ポーランド、日本)
調査部欧州課
2024年02月01日
ジェトロは1月30日、J-Bridge(注1)プログラムの一環として、デロイト・ウクライナ、デロイト・ポーランドと協力し、ウクライナ、ポーランドのスタートアップ企業によるオンライン形式のピッチ・イベントを開催した。世界的にITスキルの高い人材が豊富なことで注目されるウクライナとポーランドの先進的なメドテック企業6社(ウクライナ企業3社、ポーランド企業3社)がピッチを行った。
ウクライナのエコシステムの概要を説明したデロイト・ウクライナの担当者によると、ウクライナのビジネスは戦時下にもかかわらず、国際支援に支えられて伸びているという。以前からITセクターが強く、ユニコーン企業を幾つか輩出している。各企業の概要は次のとおり。
HELSI.meは、ウクライナのヘルステック大手で、アプリを通じて医療機関検索や診療予約、医療データ管理から、オンライン相談や服薬のリマインドまで、患者が必要とする一連の医療サービスを提供する。新型コロナウイルスのワクチン接種や戦時中の献血でも、重要な役割を果たしている。国の医療システムに組み込まれており、今後は国外展開を模索している。
CareTech Humanは、毎日の生活で使える健康診断用デバイスの研究開発を行っている。便器に装着するタイプのリモートで尿をモニタリングする機器と、卓上型機器と専用のプラットフォームをつないだ疾病検出システムがある。主に北米市場をターゲットにしている。
CheckEyeは、眼底の写真画像を使用して糖尿病性網膜症を検出するクラウドベースのソリューションを開発した。この疾病の早期発見や予防が誰でも手軽にできるようになることの社会的インパクトは大きく、世界のヘルスケアシステムへの統合を目指している。
ポーランド市場について、デロイト・ポーランドの担当者は、マイクロソフトとグーグルが同国に投資していることからもわかるとおり、IT分野のポテンシャルが高いと指摘した。その中でも、メドテックは有力な成長分野の1つだ。それらの企業概要については、次のとおり。
Biottsは、経皮薬物送達(注2)を専門とするバイオテクノロジー企業。薬の投与を注射ではなくパッチで行うことで、非侵襲的(生体を傷つけない)かつ効果的な薬物送達ができ、糖尿病の治療などで有効とされる。現在開発中のパッチを商品化すべく、パートナーを探している。
Gekko Photonicsは、分光技術を用いた非侵襲的診断ソリューションを専門としている。メタボリック症候群など生活習慣病の診断と予防への活用を提案する。糖尿病用の血糖値測定器の開発が最終段階で、2025年から販売を開始する予定だ。
Visual Tech-Labは、非侵襲的な骨組織密度評価システムを開発している。手術前に医師が正確な骨密度を測定することで、インプラント交換の必要性が減少する。特に歯科医の期待が高い。2024年はEU市場、2025年は北米と日本市場への進出を計画している。
(注1)「J-Bridge」は、ジェトロがオープンイノベーションを通じて海外企業と日本企業の協業・M&Aを支援するために設けたビジネスプラットフォーム。
(注2)皮膚から薬物を送り込むこと。
(小林圭子)
(ウクライナ、ポーランド、日本)
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