モンゴル、好調な石炭輸出を背景に、経常収支が16年ぶり黒字に
(モンゴル、中国)
北京発
2024年02月13日
モンゴル銀行(BOM、中央銀行)の発表によると、2023年の同国の国際収支は7億9,145万ドルの黒字だった。主な内訳をみると、経常収支が4億6,767万ドルの黒字、資本移転などの収支が9,046万ドルの黒字、金融収支が4億4,590万ドルの資金流入超、誤差脱漏が2億1,258万ドルの赤字だった。経常収支が通年で黒字になるのは2007年以来16年ぶりとなる(添付資料図1参照)。
経常収支の黒字には、貿易黒字の33億7,327万ドルがサービス収支の赤字19億1,241万ドルと第一次所得収支の赤字13億3,076万ドルを上回ったことが寄与した。第二次所得収支の黒字3億3,756万ドルも経常収支の黒字に貢献した(注1)。貿易黒字の背景には、特に2023年に好調だった中国向け石炭輸出が大きく寄与した(注2)。
金融収支に関しては、外国直接投資によって9億7,483万ドルの資金流入があったほか、モンゴル政府が2023年1月11日にドル建て国債のセンリュリー2債を6億5,000万ドル分発行し(2023年5月17日記事参照)、同年11月28日にはセンチュリー3債を発行して3億5,000万ドルを調達した(注3)一方、ゲレゲ債、ユーロ債、サムライ債(円建て国債)、ホラルダイ債の償還(注4)や人民元スワップの返済(注5)を行った。
国際収支の黒字を受けて、外貨準備高も増加した。2023年12月末時点の外貨準備高は前年比44.8%増の49億2,147万ドルで過去最高を記録した。2024年1月末時点では48億4,909万ドルで、前月比1.5%減少したものの、高い水準を維持している(添付資料図2参照)。
外貨準備高の増加を受けて、為替レートも若干トゥグルク高に戻している。モンゴル銀行が発表した2024年1月の平均為替レートは1ドル=3,407.37トゥグルクで、前年同月比1.7%のトゥグルク高だった。
(注1)誤差脱漏の赤字は、モンゴル銀行が把握していない外貨の国外流出(現金での国外への持ち出しなど)。サービス収支赤字の要因は、輸送(国際貨物、旅客運賃の受け取り・支払い)、旅行(外国人旅行者のモンゴル国内での消費とモンゴル人の外国旅行での消費の収支)、その他サービス(金融・証券の売買手数料、知的財産権使用料など)の支出が収入を上回ったもの。第一次所得収支の赤字の主な原因は、投資収益の還元(外国投資家が収益を本国に還流したもの)、利子・配当によるもの。第二次所得収支の黒字は、主に外国政府からモンゴルへの無償援助や外国にいるモンゴル人からの仕送りが占めている。
(注2)モンゴル国家統計局の発表によると、2023年の石炭輸出は数量ベースで前年比2.2倍の6,961万トン、金額ベースで同36.8%増の89億ドルで、いずれも過去最高を記録した。
(注3)センチュリー3債の3億5,000万ドルは、2024年3月に期限を迎えるホラルダイ債(2017年3月発行、7年物、年利8.75%、2024年3月償還予定)の一部、2026年に期限を迎えるノマド債(2020年9月28日に5.5年物、年利5.125%で6億ドル発行)の一部の借り換え目的で、期間5.5年、年利7.875%で発行された。
(注4)ゲレゲ債(2017年10月26日に5.5年物、年利5.625%で8億ドル発行)は2023年5月1日に、ユーロ債は2023年10月23日に、サムライ債は2023年12月25日に完済され、ホラルダイ債は2023年12月5日に残額の一部の3億9,250万ドルが償還された。
(注5)モンゴル銀行は2023年12月27日、中国人民銀行(中央銀行)との間で締結した通貨スワップ協定(2023年7月6日記事参照)のうち、2011~2016年に利用したスワップ枠15億元(約315億円、1元=約21円)を期限前に返済したと発表した。
(藤井一範)
(モンゴル、中国)
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