深刻な水不足を受け、水資源インフラの整備急ぐ
(モロッコ)
ラバト発
2024年02月06日
モロッコは過去5年間、水資源不足に直面しており、さまざまな側面に影響をもたらしている。深刻な水問題に対処するため、首都ラバトで1月16日、水問題に関する協議会が開催され、国王モハメッド6世が議長を務めた。同協議会の目的は「国家飲料水供給・灌漑プログラム2020-2027(国家水計画)」のさまざまなプロジェクトの進捗状況を確認することだ。
2020年に開始した国家水計画は、全体で約3,830億モロッコ・ディルハム(約5兆6,454億円、1モロッコ・ディルハム=約14.74円)を投資する「国家飲料水供給・灌漑プログラム2020-2050」の一部だ。モロッコは2020年には世界全体で約1,430億モロッコ・ディルハムを投資し、飲料水の供給力と灌漑用水の確保を強化することにより、水の安全保障を向上させることを目指している。
2023年9月から1月中旬までのデータでは、降雨量は平年比70%となっている。ダムの貯水率は、前年同期の31.5%に対し、23.2%と最低レベルを記録している。その結果、貯水量は2023年の50億立方メートルから、2024年の見通しは37億立方メートル、ダムの給水量は2023年の15億立方メートルから、2024年は6億立方メートル以下と、深刻な水不足が続くと予想されている。
この事態を改善するため、モロッコは一連の対策を打ち出した。153の大規模ダムと141の小規模ダムの建設を通じて、新たな水資源インフラを整備した。また、ブレグレ盆地(Bouregreg basin)とセブー盆地(Sebou basin)を水路でつなぐ「水ハイウエープロジェクト」を実行し、9カ月で完成した。同プロジェクトは、ケニトラ地域からラバトやカサブランカに水を融通することを目的とし、1日100万立方メートルの配水を目標としている。また、タンジェ地方への飲料水と工業用水の供給を確保するため、ウード・エル・マカジン(Oued Elmakhazine)ダムとダー・クホファ(Dar Khrofa)ダムを水路でつなぐ同種のプロジェクトも計画している。
従来はなかった水の利用も始まっている。公共機関は海水の淡水化、または汽水処理のための移動式ステーションを導入した。現在30カ所の移動式ステーションが稼働中、今後さらに28カ所を追加する予定だ。だが、計画はこれにとどまらず、特に産業部門の廃水処理、効率的な灌漑技術の導入、定期的な情報開示による住民の意識向上も課題としている。
(ファティマザハラ・ベルビシュ、吉川菜穂)
(モロッコ)
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