米商務省、ウクライナへの侵攻が続く中、ロシアへの輸出管理をさらに強化
(米国、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、イラン)
ニューヨーク発
2024年01月29日
米国の商務省産業安全保障局(BIS)は1月25日、ロシアのウクライナへの侵攻およびベラルーシによる共謀が続いていることから、輸出管理規則(EAR)を改定し、両国に対する輸出管理を強化すると官報で公示した。当該輸出管理の強化は、1月23日から既に有効になっている。
本措置により、新たに94品目〔関税分類番号(HTSコード)で6桁、注1〕が、ロシアまたはベラルーシへ輸出、再輸出、または国内移転する際に商務省からの許可が必要な対象として追加された。追加された品目は、化学品、潤滑油、金属などのほか、HTS第88類「航空機および宇宙飛行体ならびにこれらの部分品」がすべて含まれる。
また、上述の措置に加え、通常は輸出許可が必要ないEAR99(注2)に該当する「アンテナおよびアンテナ反射器ならびにこれらに使用する部分品」(HTS852910)を、ロシア、ベラルーシ、イランに輸出などする際、許可取得の対象とした。ロシアとベラルーシの軍事産業基盤を支援するイランの能力の弱体化を意図しているという。
さらに、技術的な機微度が低い軍事品目や宇宙船関連品目(注3)であっても、米国外からロシアもしくはベラルーシへ輸出、再輸出する際のデミニミス・ルール(注4)の適用を停止する。従って、これら品目にわずかでも米国原産品が組み込まれていれば、米国外から輸出などをする際に、商務省の許可が必要になる。
今回の発表に際し、商務省のアラン・エステベス次官は「ロシアのウクライナ侵攻とベラルーシの侵攻加担に対し、グローバル輸出管理連合(GECC)の同盟国やパートナーとともに対応するという米国政府の継続的なコミットメントを反映したものだ」と述べた。GECCは、対ロシア輸出などについて、米国と同等の輸出管理を履行している国々の総称で、米商務省が主導している。
バイデン政権の主要な対ロシア・ベラルーシ制裁については、添付資料参照。
(注1)詳細は官報の734条「EARの範囲」(PART 734—SCOPE OF THE EXPORT ADMINISTRATION REGULATIONS)の10.を参照。
(注2)規制品目リスト(CCL)に記載のない品目。高度な技術を要しない消費財が多く、通常は商務省からの許可なく輸出できる(ただし、輸出相手が制裁対象の場合などは許可が必要な場合もある)。
(注3)通称、「.y items」とされる、宇宙船関連品目や宇宙放射線耐性のある電子回路品目の直接製品規則9x515や、かつては武器品目として扱われていたが機微度が低いとして商務省管轄となった600 seriesが対象。詳細は官報および商務省のウェブサイトなどを参照。
(注4)再輸出される米国原産品などの価額が、製品の全体の価額の一定の割合(デミニミス)以下であれば、商務省からの輸出許可などを必要としない規定。
(赤平大寿)
(米国、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、イラン)
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