カプート新経済相、10の経済政策を発表

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2023年12月14日

アルゼンチンのルイス・カプート新経済相は12月12日、ビデオメッセージを通じて、ミレイ新政権の10の経済政策を発表した。カプート経済相は、インフレや債務などアルゼンチン経済が抱える問題を、価格統制や資本取引規制といった方法で抑え込もうとした前政権を批判し、諸問題の原因は慢性的な財政赤字にこそあり、これを解決することで経済強国だった100年前のアルゼンチンを取り戻すことができると国民に呼びかけた。

ミレイ政権は、次の10の経済政策を通じて、当面の経済再建を進める。

(1)連邦政府において締結から1年未満の有期雇用契約を更新しない。これにより、政権交代前に特権を維持するために家族や友人を雇用するという一般的慣行を止めるとともに人件費を削減する。

(2)政府広告を1年間停止する。2023年に連邦政府が支出した広告費は340億ペソ(約135億円、1ペソ=約0.4円)と膨大で、これを停止することで歳出を抑制する。

(3)省庁を削減する。省を18から9に、庁を106から54に削減する。これにより管理職ポストが50%以上、政治任用ポストが34%削減される。

(4)連邦政府の自由裁量による州政府への交付金を最小限にする。これにより政治的便宜の交渉材料として交付金を利用する慣習を排除する。

(5)連邦政府による公共事業の新規入札を中止する。新規入札を中止するだけでなく、実施承認済の入札のうち、まだ開始されていないものも中止する。

(6)エネルギーと公共交通機関への補助金を削減する。光熱費や公共交通機関は、補助金により驚くほど安い価格でサービスが提供されている。例えば、ブエノスアイレス首都圏の乗り合いバスの初乗り料金は52.96ペソだ。

(7)職業訓練と補助金給付を通じた雇用支援策を維持しつつ、貧困世帯への補助金を児童手当や食料カードなどの直接給付に限定する。

(8)公式為替レートを1ドル=800ペソ近辺に切り下げ、同時に輸出税の課税対象を非農産品に広げるとともに、財、サービス輸入に課税されている包括連帯税(通称:パイス税)の税率を引き上げる。ただ輸出税は、経済成長を阻害する逆進的な税金であり、経済情勢が改善すればこれを撤廃するとした。

(9)アルゼンチン共和国輸入システム(SIRA)を「統計・輸入情報システム」に置き換え、輸入ライセンスの事前取得を不要にする。これにより、輸入手続きの透明性を確保する。

(10)貧困世帯への支援を強化する。児童手当の支給額を倍増、食料カードの支給額を50%増額する。

ビデオメッセージでは実施時期や方法など詳細な説明がなかったが、いくつかの政策については翌13日に詳細が発表されている。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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