ミレイ政権が臨時国会を招集、日本との租税条約も審議へ

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2023年12月28日

アルゼンチン政府は12月26日、政令76/2023号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、臨時国会を招集した。会期は、2023年12月26日から2024年1月31日まで。臨時国会での審議のために提示された11の法案などの内容は次のとおり。

  1. 国家機能の改革に関する法案
  2. 単一投票用紙の確立に係る法律19945号修正法案
  3. 個人所得税法案
  4. 公務により2024年中に大統領が国を不在にすることを承認する法案
  5. 日本との租税条約を承認する法案
  6. ルクセンブルクとの租税条約を承認する法案
  7. 中国との租税条約を承認する法案
  8. アラブ首長国連邦(UAE)との投資協定を承認する法案
  9. トルコとの租税条約を承認する法案
  10. 国際条約および協定の検討
  11. 任命、昇進、退任に関する合意についての検討(注)

個別の法案の内容は不明だが、2023年12月26日付の現地紙「クラリン」(電子版)によると、一部の行政機関の廃止と機能の見直し、全党同時開放型義務的予備選挙(PASO)の廃止、農産品の輸出税率の引き上げ、税務当局に未申告で保有する外貨の使用に関する制度の導入、一部の補助金の廃止と規制緩和、下院議員定数の見直し、司法制度改革などが含まれるという。

さらには、審議内容の中には複数の租税条約を承認する法案も含まれた。これらはいずれも2019年12月まで続いたマウリシオ・マクリ政権下において署名されたものだが、同氏を中心とする政治勢力と現在のハビエル・ミレイ大統領が直近の大統領選を通じて結びつきを深めたことは記憶に新しい(2023年11月20日記事参照2023年12月12日記事参照)。尚、日本とアルゼンチンの租税条約外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますについては、2019年6月27日に両国が署名し、日本はすでに批准手続きを終えている。

フェルナンデス前政権で税関局長を務めたギジェルモ・ミッチェル氏は、複数の租税条約の法案のうち、日本とルクセンブルクとの租税条約の批准は、租税政策における後退と権限の放棄を意味すると批判した。同氏の2023年12月23日付「ラ・ポリティカ・オンライン」への寄稿によると、日本との条約ではロイヤルティーの定義から「技術援助」の概念が除外されており、恒久的施設が国内に存在しない限り、この種の所得は源泉地国で課税対象にならない、すなわち、日本企業に支払われる技術支援へのロイヤルティーに課税することができなくなると警告している。この扱いが、他国との租税条約の「最恵国待遇条項」の発動につながるだけでなく、国内の納税者が、確定申告においてロイヤルティーの支払いを費用として控除することを認めることにより、所得税の課税ベースが失われるとしている。ルクセンブルクとの条約については、利子について同様の問題が生じるとしている。

(注)詳細は不明。大使の任命に関するものの可能性がある。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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