台湾系Tier1自動車部品メーカー、EV対策強化へ

(中国)

大連発

2023年11月10日

中国の長春英利自動車工業は1991年に設立された台湾系独資のTier1自動車部品メーカーだ。長春市に本社を構え、主要製品は金属関連製品〔ダッシュボードフレーム、バンパービーム、電気自動車(EV)電池パック底板、ボディプレスなど〕と、非金属関連製品(フロントフレーム、フロアガード、EV電池パック上板など)。親会社の開曼英利工業は2016年に台湾で上場したが、長春英利は2021年に上海で上場を果たした。

ジェトロは経営状況などについて、同社の林上煒董事長に話を聞いた(11月7日)。概要は次のとおり。

(問)進出経緯と現在の経営状況は。

(答)進出当時にハルビン市に顧客がいたことと、同業他社との中国での競争を避ける目的で、ハルビン市に進出した。現在は中国第一汽車集団(一汽)が主な顧客となっている。2022年の売上は50億8,000万元(約1,067億円、1元=約21円)で、金属関連製品はその60%を占めている。供給先上位3社は一汽(45%以上)、北京ベンツ汽車(約20%)、大慶ボルボ自動車製造(約10%)だ。2022年末時点で社員数は4,500人いる。

(問)最近の部品調達の変化は。

(答)プラスチック類の部品は2010年まで、8~9割をサウジアラビア、アルゼンチンなどから調達していたが、現在は中国国内での調達が増えており、輸入部品は全体の4割程度まで減らした。金属関連製品はドイツなどからの輸入もあるが、国内調達率を引き上げており、大手国有企業の中国宝武鋼鉄集団と首都鋼鉄集団が主要調達先となっている。

(問)今後の課題は。

(答)EVの市場拡大に伴い、EV向けの部品提供をどのように行っていくかが最大の課題だ。特に動力とシャシー部分に関する部品の研究開発と生産調整をしなければならない。EVに関しては、ガソリン車ほど生産地が集積しておらず、車種もかなり多いため、顧客の獲得や市場占有率の確保がかなり難しい。これからEV関連の顧客獲得に注力していきたい。

その他、省エネ対策として、顧客のニーズに合わせてグリーン生産を検討したり、コストをかけても部品調達のグリーン化を進めたりしていく必要がある。また、自動車部品の生産や研究開発に関する専門技術を持った人材の獲得と維持も容易ではないので、こうした人材は大切にしなければならない。

(李穎)

(中国)

ビジネス短信 e3b92667cd167ddb