インド中銀総裁が東京で講演、「インドの展望への信頼感は過去最高」

(インド、日本)

調査部アジア大洋州課

2023年11月10日

インド準備銀行(RBI、中央銀行)のシャクティカンタ・ダス総裁は11月9日、東京で開催された「インド経済シンポジウム2023」で基調講演を行い、「インドの展望に対する信頼感が過去最高に達している」と述べた。

写真 インド経済シンポジウムで基調演説するダス総裁(ジェトロ撮影)

インド経済シンポジウムで基調演説するダス総裁(ジェトロ撮影)

経済的展望への信頼の背景として、(1)RBIが新型コロナ禍で銀行の流動性を持たせる施策を行った際、期限と対象を厳格に絞ることで金融システムを安定させたこと、(2)ロシアによるウクライナ侵攻に起因するインフレ対策として、政策金利を10カ月で2.5ポイント引き上げてインフレ期待を抑制したことなどを挙げた。

加えて、インドの堅調な経済成長は「マクロ経済の強化と継続的な構造改革に注力」している政策成果だと述べ、2023/2024年度(2023年4月~2024年3月)のインフレ率はRBIが目標とする2~6%に収まる5.4%、GDP成長率は6.5%との予測をあらためて示した。インドは独立から100年となる2047年の先進国入りを目指している。

日本との協力分野としてダス総裁は、特に宇宙技術、人工知能(AI)、量子コンピュータ、レアアース探査、半導体、サプライチェーンの強化、フィンテックを挙げた。人的資源の協力については「無限の可能性がある」と期待を示した。

講演後に行われた討論会には、ダス総裁に加えて、黒田東彦前日本銀行総裁、日本製鉄の森高弘副社長、アーンスト・アンド・ヤング(EY)シニアパートナーのヴィジャイ・イアール氏が参加。黒田氏は、インドが「年6%の経済成長を達成するのは容易」との楽観的な見通しを示し、向こう30年間に7%成長を続けられるかどうかが世界の経済にとって重要になるとの見解を示した。

シンポジウムは、インド経済研究所が主催し、インド大使館やジェトロなどが後援。会場には300人超が集まり、登壇者との質疑応答なども行われた。

写真 討論会の様子(左から、司会の榊原英資氏=インド経済研究所理事長、ダス氏、黒田氏、森氏、イアール氏、ジェトロ撮影)

討論会の様子(左から、司会の榊原英資氏=インド経済研究所理事長、ダス氏、黒田氏、森氏、イアール氏、ジェトロ撮影)

(今野至、深津佑野)

(インド、日本)

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