ハマスとの衝突によるイスラエルのハイテク部門などへの影響は限定的との見通し

(イスラエル、パレスチナ)

テルアビブ発

2023年11月13日

イスラエル輸出国際協力機構は11月8日、イスラエル主要紙の元コラムニストでコメンテーターのピンチャス・ランダウ氏を招き、ハマスとの軍事衝突がイスラエル経済にもたらす影響についてウェビナー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行った。ランダウ氏は、現在の状況は幾つかの産業分野に変化をもたらすとし、農業と観光部門は打撃を受けるが、テクノロジーやハイテク部門などへの影響は限定的と述べた。さらに、防衛部門の重要性が高まり、同部門への投資が拡大すると指摘した。

ランダウ氏の経済予測は民間部門と公共部門の両部門を対象としており、ヒズボラとの「第2戦線」やヨルダン川西岸での「第3戦線」が開かれないことや、米国から一定の財政支援を受けられること、イスラエル国内の治安が悪化しないことを前提としている。

民間部門に関しては、テクノロジーやハイテク部門のような対外ビジネスを行っている企業では、軍事衝突の影響は限定的と述べた。一方、観光部門は国内外の需要減少により事業活動は急減し、金利上昇による不動産需要の落ち込みも予想される。農業部門は既に収入や投資の減少に見舞われていると述べた。個人消費は衰えることがないとみているが、自動車や家電などの耐久消費財や高級品の消費は落ち込むとしている。

労働市場への参加率をみると、特にアラブ系女性の間で上昇しているという。今後はオフショアリングの減少とともにオンショアリングが増加し、農業など特定の分野では外国人労働者の受け入れが続くとみている。さらに、ハイテク部門などでは外国人熟練労働者の帰国が増加していることから、労働市場での熟練労働者の雇用増加が見込まれるとしている。

公共部門に関しては、2024年度の政府支出は減少しないため、キャピタルゲイン税や所得税などで増税の可能性があると指摘した。国防予算は、現在の国防費の大幅な増加に加え、予備役の拡大・延長などにより、今後も増加するとした。

なお、イスラエル中央銀行は11月9日に、10月7日から3週間にわたってイスラエルとハマスの軍事衝突がイスラエル経済へ与えた影響を分析外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしたところ、数千人の労働者の不在により、1週間で23億シェケル(約897億円、1シェケル=約39円)の損害を与えていると試算した。これに先立ち、中銀調査部は10月23日、軍事衝突の影響を理由に、2023年のGDP成長率見通しを2.3%、2024年は2.8%とそれぞれ下方修正している(2023年10月25日記事参照)。

イスラエルとハマスの衝突の詳細についてはジェトロの特集を参照。

(アンナ・ジュコブ、中溝丘)

(イスラエル、パレスチナ)

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