IPEF閣僚会合で貿易以外の柱が実質妥結、先行するサプライチェーン協定に署名

(米国、日本、インド、ニュージーランド、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、フィジー)

ニューヨーク発

2023年11月17日

米国商務省は11月16日、サンフランシスコで11月13~14日に開催したインド太平洋経済枠組み(IPEF)閣僚会合を経て、14カ国による共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。

IPEFはバイデン米政権が提唱し、2022年5月に立ち上げた経済枠組みで、(1)貿易、(2)サプライチェーン、(3)クリーン経済、(4)公正な経済という4本柱のルールや協力枠組み作りに関して、これまでに8回の交渉官会合が行われてきた。現時点で14カ国が参加している(注)。閣僚会合では、(3)クリーン経済と(4)公正な経済の柱で実質妥結に至ったことが明らかにされた。また、5月に実質妥結していた(2)サプライチェーン(2023年9月11日記事参照)の柱については、今回の会合で協定書〔英文PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)和文PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(外務省)〕の署名式が行われた。(1)貿易の柱は交渉が継続される見込みだ。

新たに実質妥結した(3)クリーン経済では、参加国がエネルギー安全保障、エネルギー転換を実現し、気候変動への強靭(きょうじん)性を高め、温室効果ガス(GHG)削減、持続可能な生活を促進する方策が含まれている。例えば、参加国でクリーンかつ気候変動に適した技術の研究開発、商業化、導入などを加速させることや、インフラや技術、基準の相互認証などの協力を通じて国を越えるビジネス活動を活性化させるべく、域内の相互接続性を強化することなどがうたわれている。参加国はそれらの実現を後押しするために域内投資の促進でも協力するとしており、年次のIPEFクリーンエネルギー投資家フォーラムを開催することで合意した。第1回は2024年前半にシンガポールで開催される予定だ。さらに、域内でのインフラ計画のためにIPEF基金の立ち上げでも合意した。日本政府はこれに1,000万ドルを拠出する予定だ。同じく実質妥結に至った(4)公正な経済では、贈収賄を含む腐敗行為への対策や、税制に係る透明性向上と情報交換などの協力がうたわれている。具体的には、「腐敗の防止に関する国連条約(UNCAC)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」や「OECD外国公務員贈賄防止条約外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に基づいて参加国が負う義務に整合するかたちで、腐敗行為の防止、摘発、捜査、追及、制裁の取り組みを強化することなどで合意した。

このほか、参加国はIPEF協議会や合同委員会を立ち上げるためのIPEF協定でも実質妥結した。いわゆるIPEF全体の運営機関に相当する。協議会は参加国全体でIPEFの4本柱の運用に係る問題や新規参加国の可能性などを検討し、合同委員会は柱の(2)~(4)に係る作業を監視し、重複や不整合がないかを調整することが主眼となる。いずれも年次会合が予定されている。参加国は今後、実質妥結した3つの協定について、国内調整や法的な確認を経て最終的な協定文書を作成していく。米国政府で柱(2)~(4)の交渉を担当する商務省のジーナ・レモンド長官は「IPEFで歴史的な進展を遂げた」「われわれは団結して、21世紀の課題に対処し、地域全体の経済的関与を強化している」との声明を出している。

(注)日本、米国、インド、ニュージーランド、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、フィジーの14カ国。インドのみ貿易の柱に参加していない。

(磯部真一)

(米国、日本、インド、ニュージーランド、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、フィジー)

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