米財務省がロシア産原油取引の上限価格違反に対し初の制裁、G7などと新たな勧告発表
(米国、ロシア、ウクライナ、日本、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国、EU)
ニューヨーク発
2023年10月13日
米国財務省は10月12日、海上輸送によるロシア産原油の国際取引価格の上限に関する政策に違反したとして、外国の事業体2社と船舶2隻を金融制裁の対象である「特別指定国民(SDN)」に指定した。同政策に関する制裁としては初となる。
米国、日本を含むG7諸国とEU、オーストラリアから成る「上限価格連合」は、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて2022年12月以降、海上輸送されるロシア産原油に1バレル当たり60ドルの上限価格を設定している(2022年12月6日記事参照)。ただし同連合は、参加国・地域の企業に対して、同上限価格を超えなければロシア産原油を第三国に海上輸送するサービスに参加することを許容している。つまり、上限価格を超える価格で売買されたロシア産原油に対しては、輸送や金融、保険付保などのサービスを提供することが禁止される。今回は、上限価格を超える取引に利用された船舶2隻そのものと、それらを所有しているアラブ首長国連邦籍のランバーマリン(Lumber Marine)とトルコ籍のアイスパールナビゲーション(Ice Pearl Navigation)の2社がSDNに指定された。いずれも取引の過程で米国企業のサービスを利用したと断定している。SDNに指定された個人・事業体には、在米資産の凍結や、米国人(注1)との資金・物品・サービスの取引禁止が科される(注2)。
上限価格連合が新たな勧告
上限価格連合は同日、米国の制裁の意義を強調しつつ、ロシアによる違法、不当、かついわれのない戦争に対し、制裁その他の経済措置を講じることへの強いコミットメントを表明する声明を発表した(仮訳)。また、海事石油産業における責任ある慣行を促進し、原油および石油製品の上限価格の順守を強化するため、海事安全に関する勧告を出した。勧告の中では、上限価格政策に違反する取引を行う船舶や事業者などの特徴や、違反取引に関わるリスクを軽減するために推奨する行動を示している。例えば、取引に利用される船舶に継続的かつ適正な保険が付保されているかを確認することや、迂回取引に利用されやすい船舶間の原油移送に対するデューディリジェンスの徹底、潜在的に違反となり得る取引に気付いた場合の関係機関への通報などが挙げられている。
(注1)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。
(注2)SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。SDN指定を今回受けた企業などの詳細は財務省のウェブサイトで確認できる。ウクライナ情勢に関する財務省による制裁の全容は同省の「ロシア関連制裁」のポータルサイトを参照。制裁対象に指定した個人・企業などについては、同省外国資産管理局(OFAC)のデータベースでCountry欄のRussiaを選択し、Searchをクリックすることで確認可能。
(磯部真一)
(米国、ロシア、ウクライナ、日本、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国、EU)
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