モディ・インド首相、イスラエルとの連帯表明

(インド、イスラエル)

ニューデリー発

2023年10月20日

インドのナレンドラ・モディ首相は10月10日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と電話会談し、イスラム原理主義組織ハマスの攻撃による犠牲者への哀悼を表明するとともに、あらゆる形態のテロを強く非難すると述べた。モディ首相はハマスによるイスラエル国内での大規模テロが発生した10月7日当日にも、自身のX(旧ツイッター)アカウントで「この困難な時期にわれわれはイスラエルと連帯する」と投稿し、イスラエルと歩調を合わせる姿勢を早々に打ち出していた。

モディ首相がイスラエルを支持する姿勢を示したことについて、インド国内では、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始時の対応と対比的に報じられている。ウクライナ情勢では、インドは当初から当事国間の対話によって解決を図るべきとの立場を取り、西側諸国による対ロシア経済制裁には加わらず、国連安保理や国連総会での対ロシア非難決議案の採決でも棄権していた。一方、今回のハマスによるイスラエルへの攻撃は、インドが過去に経験してきた複数のテロ事件をほうふつさせるものだったとの指摘もある(「ヒンドゥ」紙10月14日)。

中東情勢の不安定化による原油価格や船賃の高騰が国内の物価上昇の要因になり得るとの見方も出ているが(「インディアン・エクスプレス」紙10月14日)、イスラエルとハマスの武力衝突によるインド経済への影響はあまり大きくないとの意見が多い。インドの対イスラエル貿易額(2022年)は、輸出で75億ドル(構成比1.7%)、輸入で3億ドル(同0.4%)と限定的だ。なお、2023年9月のG20サミットに併せて発表された構想「インド・中東・欧州経済回廊(IMEEC)」への影響に関しては、ニルマラ・シタラマン財務相が「(IMEEC構想は)目先のためではなく、長期的な視野をもって始めたものだ」として、直接的な影響はないとの見解を示したことが報じられた(「エコノミック・タイムズ」紙10月15日)。

インドがイスラエルとの関係強化に乗り出した歴史は比較的浅い。両国が正式な外交関係を結んだのは1992年のことだ。モディ首相は2017年7月、インド首相として初めてイスラエルを訪問し、両国の関係を「戦略的パートナーシップ」に格上げすると宣言。両国首脳の共同声明では、科学技術や防衛分野を含めた幅広い分野の協力を目指すほか、世界平和と安定のためにテロ撲滅に向けた協調を図るとしていた。

(広木拓)

(インド、イスラエル)

ビジネス短信 8dbc4cc6c1d5276d