インド食品市場、ALPS処理水の影響は見られず

(インド)

ニューデリー発

2023年10月12日

東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水の海洋放出が始まった8月24日以降、インド国内でも、一部メディアが海洋放出について報道している。現地メディアは国際原子力機関(IAEA)と日本政府がうたう科学的根拠に基づく安全性に言及し、中国や韓国など日本の周辺国の対応を客観的に報じている。

9月9~10日に首都ニューデリーで開催されたG20サミットで、岸田文雄首相が日本の立場を説明したが、その後もインド政府やインド食品安全基準局(FSSAI)など食品市場に関係する機関は特段の見解を示しておらず、メディアも引き続き客観的な立場で各国の対応を限定的に報じるにとどまっている。日本の水産品に対するインド国内の需要は少なく、この件に対する関心が低いことも背景として挙げられるだろう。

各事業者や消費者レベルの動向について、ジェトロでは、ニューデリー近郊に店舗を構える複数の日本食レストランや、日本食品を扱う卸売業者などにヒアリングを行った。日本食レストランのインド人オーナーらによると、「現時点では集客や売り上げに影響は全く出ておらず、消費者目線でも日本の水産品取り扱いに特に懸念はない」とのことだった。むしろ、他国での需要減によって日本の水産品の輸入価格が下がり、メリットを受けているケースもあるという。

インド人の消費者からは、「ALPS処理水に関する報道は認識しているが、科学的な見解を示す客観的な報道が多くあることや、日本が無責任な対応を取るはずがないという個々人が抱く信頼感から、影響は限定的なのではないか」というコメントが聞かれた。

(川崎宏希)

(インド)

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