改正された商用暗号管理条例の留意点、弁護士に聞く
(中国)
調査部中国北アジア課
2023年10月27日
中国国務院は「商用暗号管理条例」を4月27日に改正、公布した(7月1日施行)。商用暗号(注1)に対する管理、規制は2020年1月1日施行の「暗号法」によって大きく変更されており、今回の改正は同法の枠組みの下で詳細を規定するもの。
ジェトロは条例の留意点について、森・濱田松本法律事務所の石本茂彦弁護士、鈴木幹太護士に聞いた(10月16日)。主な内容は次のとおり。
(問)商用暗号製品の販売や商号暗号サービスに従事する場合に留意すべき点は。
(答)中国で商用暗号製品の販売や商号暗号サービスに従事する場合は、「暗号法」や条例で定められている管理や規制に留意することが重要。特に、商用暗号活動に従事するに当たって、強制国家標準などが規定する技術要求への合致が要求されていることや、商用暗号の検査測定・認証を受けることが推奨されていることのほか、特に国の安全、国の経済と人民の生活、社会公共の利益に関わる商用暗号製品は、製品リスト(ネットワーク重要設備、ネットワーク安全専用製品リスト)に掲載が必要とされること、一定の検査・認証機関による検査測定・認証に合格した後に限り、販売または提供ができる点などに注意する必要がある。
(問)商用暗号の輸出入に当たって留意すべき点は。
(答)商用暗号の輸出入(注2)は旧条例から大きく変更され、国の安全、社会公共の利益などに関わる商用暗号に限定したかたちで、リスト管理されることになった。
商用暗号輸入許可リストや商用暗号輸出管理リスト(注3)、輸出管理法に基づく両用品目リスト(注4)がこうしたリストに該当し、商用暗号製品などを中国に輸出入する場合、これらのリストを参照し、該当する製品等があれば、許認可を申請する必要がある。
(問)そのほかに留意すべき点は。
(答)重要情報インフラ運営者に対しては、商用暗号の関連法の観点からも、厳格な管理と規制がなされている。日系企業では、中国で重要情報インフラ運営者に該当する事業者は多くはないという理解だが、仮にこれに該当する場合には、関連規制に留意する必要がある。また、重要情報インフラ運営者と取引を行う事業者も、重要情報インフラ運営者にこうした義務が課されているということを十分に理解した上で、取引などを進めることが望まれる。
なお、ジェトロは10月12日、調査レポート「中国の安全保障貿易管理に関する制度情報 専門家による政策解説(2023年9月)」を公開した。同レポートで「『商用暗号管理条例』(2023年改正)の概要および留意点(444KB)」と題した解説記事を森・濱田松本法律事務所の協力を得て掲載している。
(注1)商用暗号は、暗号法や商用暗号管理条例などで、商用暗号製品を含むが、これに加えて、商用暗号技術、商用暗号サービスを含むより広い概念。
(注2)輸出入については、商用暗号製品だけでなく、商用暗号技術、商用暗号サービスを含む。
(注3)ジェトロの調査レポート「商用暗号の輸出管理リストおよび 管理措置の概要(476KB)」を参照。
(注4)ジェトロの調査レポート「両用品目および技術輸出入許可証 管理リストの概要(420KB)」を参照。
(小宮昇平)
(中国)
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