九州各県で豚熱(CSF)へのワクチン接種開始、豚肉などの輸出が一時停止に

(九州)

福岡発

2023年09月22日

佐賀県唐津市は9月1日、市内の養豚場で豚熱(CSF)の発生が確認されたと明らかにした。農林水産省は9月12日、防疫を目的に、九州7県から提出された豚熱のワクチン接種プログラムを承認した。これを受けて、福岡、佐賀、長崎、大分の4県が19日にワクチン接種を開始した。熊本、宮崎、鹿児島の3県は27日に接種を開始する予定だ。

農林水産省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、豚熱は豚やイノシシが感染する病気で、人には感染せず、仮に豚熱にかかった豚の肉や内臓を食べても人体に影響はないという。また、同省は、感染豚の肉が市場に出回ることはないと述べている。

九州各県で生産・処理された豚肉や加工品に対して、ワクチン接種が開始され次第、動物検疫所による輸出検疫証明書の交付は一時停止となる。これにより、豚肉などの輸出に与える影響が懸念される。

畜産統計によると、日本での豚の飼養頭数は、2022年2月1日時点で895万頭、このうち九州は31.3%(280万頭)を占めている。中でも鹿児島県は119万9,000頭(日本全体の13.4%)と大きく、宮崎県(76万4,200頭、8.5%)、熊本県(33万9.400頭、3.8%)、長崎県(19万5,900頭、2.2%)がこれに続いている。鹿児島県の2022年度の豚肉輸出額は前年度比11.9%増の3億1,400万円だった。同年度の豚肉の主要輸出先(注)に関して、香港が73.4%(輸出額:13億1,616万円)を占め、次いでシンガポール(20.3%、3億6,482万円)、マカオ(3.8%、6,743万円)、タイ(1.6%、2,929万円)となっている。

九州農政局は、豚熱の防疫措置に対応するため、職員を現地に派遣するほか、消費者、生産者、流通業者への正確な情報提供のため、豚熱相談窓口を設けている。今回の事案が豚肉の輸出量減少など、九州各県の産業に与える影響を注視する必要がある。

(注)HSコードの0203.29に限る。輸出総額は17億9,308万円。

(片岡一生)

(九州)

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