政府が水素国家戦略を公表、2050年までに年500万トンの水素生産、8割が輸出へ
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2023年09月27日
アルゼンチン政府は2023年9月12日、水素経済開発国家戦略(以下、水素国家戦略)を発表した。2050年までに年間500万トンの水素を生産し、そのうち8割を輸出することを目指す。
政府は、温室効果ガスの排出量削減目標を達成するというパリ協定に基づく国際約束を守るため、これまでに「気候変動への適応と緩和のための国家計画」「2050年までの長期的な低排出による持続可能な開発計画」「2030年に向けたエネルギー転換国家計画」(以下、エネルギー転換計画)などのさまざまな計画を公表してきた。このうち、エネルギー転換計画は、国際約束を守るために2030年までに達成すべき目標と取るべき行動を示しており、その1つに低炭素排出の水素開発を挙げている。そのためのアクションとして、省庁横断水素円卓会議など関係省庁の積極的関与、低炭素排出水素を推進するための法整備、低炭素排出水素の開発を推進するための知見の創出を掲げており、このうち、省庁横断水素円卓会議の取り組みが、水素戦略の策定だった。
年間500万トンの水素生産に必要な投資額は900億ドルと試算
今回公表された水素国家戦略は、水素の生産、技術開発の重要性を認め、低炭素排出水素、すなわち再生可能エネルギー由来のグリーン水素、原子力エネルギー由来のピンク水素、化石燃料由来のブルー水素を生産し、国内市場と海外市場の双方にこれらを供給し、水素経済の創出を目指すことを掲げた。ただ水素を生産するだけでなく、関連機器とサービスの国産化も視野に入れている。
また水素国家戦略は、2030年、2050年までの水素の生産コスト、輸出量、国内消費量、雇用創出などについて定量目標を掲げている(添付資料表参照)。2050年までに輸出量と国内消費量を合わせた年間500万トンの水素を生産する目標を実現するために30ギガワット(GW)の電解槽、55GWの再エネ発電設備が必要で、900億ドルの投資が見込まれると試算している。輸出は、生産量の8割を目指す。また、水素のバリューチェーンを構成する関連設備やサービスの50%を国産化する必要があるとしており、現在は国内生産がない財やサービス、例えば、電解槽の構成部品の製造や保守技術などの国産化を目標に掲げている。
水素国家戦略の公表に先立ち、政府は2023年5月、低炭素・その他の温室効果ガス排出水素推進法の法案を国会に提出したほか、南部のティエラ・デル・フエゴ州、リオ・ネグロ州も水素に関する戦略を公表している。同じく南部のチュブット州では2008年にグリーン水素のパイロットプラントが設置され、サンタ・クルス州でもテストプラントの建設計画が進められている。
(西澤裕介)
(アルゼンチン)
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