西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)がニジェールへ待機軍編成を発表、平和的解決も模索
(ニジェール、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS))
アビジャン発
2023年08月14日
西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は8月10日、ナイジェリアの首都アブジャで緊急首脳会議を開き、ニジェールの憲法秩序回復に向けた「待機軍」の派遣を声明で発表した。会議には、近年の軍事クーデターによりECOWAS加盟国の資格停止処分を受けているマリ、ギニア、ブルキナファソを除く12カ国が参加し、このうち議長国ナイジェリアのボラ・ティヌブ大統領を含む8カ国から大統領が出席したほか、ECOWAS委員長やアフリカ連合(AU)、国連西アフリカ・サヘル事務所(UNOWAS)の代表者らが出席した。またニジェールからは、拘束中のモハメド・バズム大統領政権のハスミ・マスドゥ外相が参加した。
前回7月30日の首脳会議では、8月6日までのバズム大統領の職務復帰を求めており、この通告に応じない場合は軍事介入の可能性もあると警告していた。今回はそれを踏まえた声明であると同時に、平和的手段による解決を図ることも再確認している。一方、アブドゥラハマネ・チアニ将軍らニジェール軍部はECOWASの警告に応じることなく、8月7日には元財務相のアリ・マハマン・ラミン・ゼヌ氏を首相に指名した。
ECOWAS連合軍の軍事介入は、2017年のガンビアを最後に、2021年のマリとギニア、2022年のブルキナファソのいずれのクーデターでも実施されていない。今回のニジェールへの軍事介入にはナイジェリア、コートジボワール、ベナンなど複数国の名が挙がっているが、これらの国では、軍事介入の正当性への疑義や国内経済問題の優先を訴える声が多く、加盟国の間でも軍事介入に関して足並みに乱れが生じている。また、ニジェールと国境を接するマリおよびブルキナファソはニジェールへの軍事介入は自国への「宣戦布告」とみなすと強い警告を発表しているほか、ニジェール北部と国境を接するアルジェリアのアブデルマジド・テブン大統領はバズム大統領を支持する一方で、軍事介入はサヘル地域を不安定化しかねないとして強く反対している。
ニジェールにイスラム過激派テロ対策を目的とする軍事基地を置く米国、フランスの両国は、ECOWASの声明を支持している。ニジェール軍部はフランスとの軍事協定の破棄を通告しているが、フランスは、協定はバズム政権と締結したものだとして応じていない。このほか、ニジェールにおけるフランスに次ぐ第2位の投資国として、過去20年にわたり石油およびウラン鉱山開発に力を入れてきた中国は、バズム大統領の身の安全と対話を通じた平和的な解決を呼びかけている。
報道によると、当初はクーデターに批判的な国民の声も存在したが、クーデター2日目にニジェール陸軍参謀本部がクーデター支持を表明した後、流れが変わったという。ECOWASの軍事介入声明への反発は強く、8月3日のニジェール独立記念日には首都ニアメの街頭でクーデターを支持する市民の多くが反ECOWAS、反フランスを訴え、さらにECOWASが軍事介入の最後通告期限とした8月6日には市内のサッカースタジアムに約3万人の市民が集まり、チアニ将軍ら軍部への支持を訴えた。
(水野大輔)
(ニジェール、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS))
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