プーチン大統領、BRICS首脳会議で輸送・金融面の協力アピール

(ロシア、ブラジル、インド、中国、南アフリカ共和国)

調査部欧州課

2023年08月31日

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は8月23日、南アフリカ共和国のヨハネスブルク市内で開催された第15回BRICS首脳会議にオンラインで出席し、演説を行った。その中で同大統領はBRICS加盟国間の関係強化について期待感を表した。

演説では、BRICS加盟国間で関係強化を目指す特定の分野と関係強化のための優先事項について言及が幾つかあった。1つ目に、安全な輸送ルートの新設について。プーチン大統領は「BRICS内に、南北輸送回廊(注)だけでなく、より広範に、地域間および世界的な物流・輸送回廊の開発を扱う常設の輸送委員会を設立する時が来た」と呼びかけた。2つ目は、金融システムの協力拡大についてだ。「国際通貨・金融システムにおける各国の役割の拡大や、銀行間協力の発展、自国通貨の使用拡大、税務・関税・独占禁止当局間の協力の深化」が重要と指摘した。さらに「ロシア側としては、デジタルトランスフォーメーション(DX)や人工知能(AI)の応用分野を含め、蓄積された経験を共有する用意がある」として、研究とイノベーションの分野での協力の必要性をアピールした。

8月24日には、BRICSに新たにアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6カ国の加盟が発表された(2023年8月25日記事参照)こともあり、ロシア政府は今後の国際社会でのBRICSの影響力は強まるとみている。ロシア国営の第1チャンネルで放送されたテレビ番組で、セルゲイ・ラブロフ外相は既に拡大しているBRICSのG20における地位は強化されると強調し、「形式的には、(G20の国々)がG7派とBRICS派に二分されることは現実味を帯びつつある」として、今後のBRICSの影響力が拡大する考えを明らかにした。

BRICS首脳会議は今回で15回目。翌年に開催が予定されている第16回首脳会議ではロシアが議長国を務め、ロシアのカザンが会場となる見込み。

(注)イランなどを経由して、インドとロシアを結ぶ複合輸送網。

(後藤大輝)

(ロシア、ブラジル、インド、中国、南アフリカ共和国)

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