2022年の中東の再エネ発電容量は29GW、10年で倍増
(中東、イラン、イスラエル、アラブ首長国連邦、ヨルダン、イラク、サウジアラビア、バーレーン、クウェート、シリア)
調査部中東アフリカ課
2023年07月12日
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が7月3日に公表した報告書「再生可能エネルギー統計」によると、2022年の世界の再生可能エネルギー発電容量は約3,382ギガワット(GW)だった。中東(注)では約29GWで、世界全体や他の地域と比べると少ないが、2013年の約14GWから10年で倍増した。中東の電源全体に占める再エネの発電比率は8.7%と、2013年の5.7%から増加したものの、中東には石油・天然ガスの産出国も多く、これらを発電源とした火力発電が引き続き中心となっている。そのため、再エネの割合は他地域よりも相対的に低い。
再エネ発電容量を国別に見ると、中東最大はイランで、イスラエル、アラブ首長国連邦(UAE)が続いた。2013年からの再エネ発電容量の増加をみると、イラン、イラク、シリアなど河川があり、以前より水力発電が多かった地域で大きな変化はなかった。一方で、イスラエル、UAE、ヨルダンなどで太陽光発電が顕著な伸びを示した。再エネ発電比率では、パレスチナ54.6%、ヨルダン39.1%、イスラエル20.8%と、資源が少ない国・地域では高かった。他方、バーレーン0.1%、クウェート0.5%、サウジアラビア0.5%と、産油国では低い国も多い。中東での発電容量の上位10は次のとおり。
【2022年の中東の国別発電容量】(かっこ内は2013年の数値)
- イラン:1万2,399メガワット(MW)(1万380MW)
- イスラエル:4,470MW(473MW)
- UAE:3,591MW(128MW)
- ヨルダン:2,555MW(17MW)
- イラク:1,599MW(2,304MW)
- シリア:1,557MW(857MW)
- カタール:824MW(21MW)
- レバノン:732MW(288MW)
- オマーン:705MW(1MW)
- サウジアラビア:443MW(22MW)
- (参考)トルコ:5万5,943MW(2万5,551MW)※同報告書ではユーラシア地域に分類。
同報告書によると、2021年の再エネ発電量(実際の電気生産量)は、世界では7,858テラワット時(TWh)、中東では40TWhと少ない。中東の再エネ発電量の内訳をみると、水力が最大の19TWhで、太陽光も18TWhと割合は高い。風力が3TWh、バイオなどその他の項目はわずかだ。
(注)IRENAによる同報告書では、バーレーン、イラン、イラク、イスラエル、ヨルダン、クウェート、レバノン、オマーン、パレスチナ、カタール、サウジアラビア、シリア、アラブ首長国連邦(UAE)、イエメンの14カ国・地域を中東に含む。北アフリカやトルコなどは中東に含んでいない。
(井澤壌士)
(中東、イラン、イスラエル、アラブ首長国連邦、ヨルダン、イラク、サウジアラビア、バーレーン、クウェート、シリア)
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