政府、輸入代金支払いに必要な外貨取得に課税

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2023年07月26日

アルゼンチン政府は7月24日、政令377/2023号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、財およびサービスの輸入代金の支払いに必要な外貨購入への課税を発表した。政府は、今回の決定は国内生産や経済活動の促進が目的だとしているが、輸入を抑制することで外貨不足の解消を図る狙いがあるとみられる。

輸入代金の支払いに必要な外貨購入に新たに課税されるのは、2019年法律27541号(社会連帯・生産性回復法)が規定する「社会的包摂の促進と資金調達のための外貨購入に係る税」(通称パイス税)だ。パイス税は、居住者による貯金目的などの外貨購入、国外でのクレジットカード・デビットカードを使った買い物、国際航空券の購入など、外貨による支払いを必要とする取引に対して課税されていたが、今回、輸入取引を対象に、次のとおり課税されることになった。

(1)サービスの輸入代金の支払いに係る外貨購入:25%

ただし、貨物運賃の場合は7.5%。医療や教育関連サービスの輸入に係る支払いは対象外。また、輸入者が保有する外貨で支払う場合も対象外とする。コンサートなど海外への支払いを伴うイベントなどの開催に係る費用は、これまでどおり30%を課税する。

(2)財の輸入代金の支払い向けの外貨購入:7.5%

フリーゾーン、フエゴ島特別区への輸入も対象とする。医薬品、消防用具、燃料、潤滑油、発電に必要な製品、基礎的食糧バスケット(CBA)に係る製品、自動車や農業機械に係る一時輸入などは対象外。サービス輸入と同様、輸入者が保有する外貨で支払う場合は対象外。いわゆる贅沢(ぜいたく)品の輸入に係る外貨購入についてはこれまでどおり30%を課税する。

7月25日付現地紙「エル・クロニスタ(電子版)」によると、今回の課税により、輸入取引時の為替レートが1ドル=約290ペソ(中央銀行卸売りレート1ドル=270ペソに7.5%加算)となるため、輸入コストの増加が物価の上昇につながることが産業界や経済アナリストなどの間で懸念されている。これに対して、セルヒオ・マッサ経済相は「食品や生活必需品は今回の決定の対象外だ」として、物価上昇への影響は限定的との見方を示した。しかし、官報公示と同日の7月24日、非公式の為替レート(ブルーレート)は、前日の1ドル=529ペソから552ペソまで急落した。その後は530ペソ台まで戻したが、輸入へのパイス税の課税と為替相場の変動がどのように物価に影響するかに注目が高まる。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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