米国テキサス州、固定資産税減税など180億ドルの大減税法案が成立へ

(米国)

ヒューストン発

2023年07月18日

米国のテキサス州議会下院は7月13日、固定資産税減税などを含む約180億ドルの大型減税法案を可決した。グレッグ・アボット知事(共和党)の署名後、11月7日の州民投票により、州憲法の改正を経て実現する。消費の拡大やインフレの進行に伴う税収増を受け、州財政黒字は2021年に112億ドル、2022年に262億ドル、2023年に327億ドル(推計)と年々拡大している。州議会では、拡大した税収の有効活用策をめぐり議論が続いてきた。「テキサス史上最大の固定資産税減税」(アボット知事)となる。

写真 テキサス州の住宅の様子。財政黒字を固定資産税減税に活用(ジェトロ撮影)

テキサス州の住宅の様子。財政黒字を固定資産税減税に活用(ジェトロ撮影)

減税法案による主な措置は次のとおり。

  1. 州が州内の各学校区宛てに126億ドルを拠出。各学区が地元の学校や道路、警察など公共サービスの財源として、住宅や商業施設所有者に課す固定資産税の税収を補填(ほてん)する(課税対象者の税負担は平均4割以上減少の見込み)。
  2. 個人の主たる居住用住宅に対して、固定資産税の課税対象となる住宅評価額から一律4万ドル減額している現行優遇措置を10万ドルに拡充(約570万の家主にメリット)。
  3. 個人の主たる居住用住宅以外の、セカンドハウスや商業用不動産に対して、評価額が500万ドル以下の物件の評価額上昇率を3年限定で年20%に抑制。
  4. フランチャイズ税(注1)の課税対象となる売り上げを250万ドルに引き上げ(約6万7,000社の中小企業事業者の支払いが免除される)。

ポール・ベッテンコート州上院議員によれば、住宅所有者の場合、今回の減税効果は1人当たり年間平均1,300ドルに上るという。

非営利団体のタックスファウンデーションによれば、テキサス州の1人当たりの州および地方税(以下、地方税)負担は、2022年に平均4,994ドルとなっている。州所得税がなく、全米では15番目に負担が少ない。人口1,000万人以上の州でみれば、約3,003万人と全米2位(注2)のテキサス州よりも地方税負担が少ないのは、ジョージア州(4,862ドル、1,092万人)、ミシガン州(4,720ドル、1,003万人)のみだ。

一方、テキサス州では地域で徴収される固定資産税率が高い(注3)。今回の措置は「負担感が増す固定資産税問題への、包括的で、永続的な解」(アボット知事)となる。

(注1)州内で事業活動を行う主体に課税。2022~2023会計年度の課税対象売上額は123万ドルで、税率は小売業・卸売業が0.375%、その他は0.75%。詳しくは「テキサス州における各種税制について(2020年3月)」参照。

(注2)米センサス局2022年推計。1位はカリフォルニア州の3,903万人。

(注3)米国消費者金融ウォレットハブによると、2023年の実効固定資産税率は1.74%(住宅価格中央値÷固定資産税徴税額中央値)と50州中5番目に高い。

(桜内政大)

(米国)

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