ワグネルがロシア南部で武装反乱、経済への影響は限定的

(ロシア、ベラルーシ)

欧州課

2023年06月29日

ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏は、6月23日に武装蜂起を発表した。24日には、ワグネル部隊がロシアの南部に位置するロストフ州ロストフ・ナ・ドヌのロシア軍施設を占拠し、モスクワに進軍を開始したと表明した(コメルサント6月24日)。同日、ロシア政府に仲介を申し出たベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領がプリゴジン氏と進軍の停止などで合意し、事態は沈静化した。ロシアの主要閣僚は26日に、ロシア国内への影響は少ないと報告した。

モスクワ市、モスクワ州、ボロネジ州では、連邦保安局が6月24日に警戒態勢を発令し、大規模な交通規制を導入したため交通渋滞が発生した。交通規制に関しては、24日からモスクワとノボロシースクを結ぶ約1,542キロの連邦道路「M4」の一部の区間が通行止めとなった。そのほかにも、モスクワとチェリャビンスクを結ぶ連邦道路「M5」、モスクワとウクライナ国境を結ぶ連邦道路「M2」でも交通規制が導入されたが、25日から制限が解除され始めた(オートニュース6月25日)。

RBK(6月23日)によると、プリゴジン氏の武装蜂起の発表を受け、本取引と夜間取引のデータを反映した株価指数「IMOEX2」は23日午後11時10分時点で、前日終値比2.02%減の2,738.85ポイントに下落した。しかし、26日の終値は2,753.11ポイントと小戻しした。

外国為替をみると、モスクワ取引所の6月23日のルーブル対ドル為替レートの終値は1ドル=84.7ルーブルだったが、24日の午前中に市内の外貨両替所では一時、1ドル=100~105ルーブルのドル高・ルーブル安となった。ただ、同日夕方には1ドル=88ルーブル台に戻った。両替や現金の引き出しの駆け込みはなかったが、政治技術センターの経済学者ニキータ・マスレニコフ氏は、中央銀行などが一時的に為替レートを引き上げることで国民がルーブルを手放すのを防いだとの見方を示している(モスコフスキー・コムソモレツ6月26日)。

6月26日には首相と副首相による会議が開かれ、武装蜂起による経済への影響について各副首相が次のとおり報告した。アンドレイ・ベロウソフ第1副首相によると、一部の地域で現金の需要が増加したが、中銀の対策により現在は安定した。交通機関は連邦道路「M4」では渋滞が続いているが、道路と航空輸送は全て通常どおりに機能している。デニス・マントゥロフ副首相兼産業商務相は、交通規制の導入後、企業は代替輸送で対応したと説明した。アレクサンドル・ノワク副首相は、ガソリンなど消費者へのエネルギー供給の問題は発生しなかったと述べた。

モスクワ市のセルゲイ・ソビャニン市長は、武装蜂起が発生した6月24日に、モスクワで行われる予定の大規模イベントの中止や交通規制を発表したが、都市のサービスは完全に機能しており、市内の移動も制限されていないと述べていた(タス通信6月24日)。

(小野塚信)

(ロシア、ベラルーシ)

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