在中欧州企業アンケート、事業拡大を検討する企業が5割を下回る

(中国)

北京発

2023年06月28日

在中欧州企業の団体である中国EU商会は6月21日、景況感調査の結果外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同調査は2004年から毎年実施されている(注1)。

調査では、過去1年の中国のビジネス環境が「より困難になった」との回答が前年比4ポイント上昇して64%となり、過去最高になった(注2)。

2022年の利益については、黒字との回答が前年比10ポイント低下の69%となった一方、赤字は15%と前年(8%)より2倍近くに増加した。中国での事業展開については、2023年に拡大を検討しているとの回答が48%(前年調査では62%)となり、2016年以来7年ぶりに50%を下回った(注3)。

また、中国における既存の投資または将来計画している投資を他の市場に振り替えることを検討・実施している企業は、既存の投資について18%、将来の投資については22%となった。振り替え先は1位がASEAN(27%)、2位が欧州(21%)だった。投資の振り替えを検討・実施する要因としては、中国と第三国とのデカップリングの影響の軽減、中国のビジネス環境の不確実性、サプライチェーンの強靭(きょうじん)化などが挙げられた。

サプライチェーンに関しては、75%の企業が過去2年間に自社の戦略に関する見直しを行ったとした。そのうち、「重大な変更は行わない」が35%で最も多く、「中国外のサプライチェーンを一部または全て中国内に移管する」が24%で続いた。中国からの完全な撤退を検討している企業は0.2%にとどまった。なお、見直しを行った企業のうち、実際にサプライチェーンの一部を中国外に移転したのは12%で、主な移転先は欧州、ASEANとなっている。

さらに、市場参入や監督管理の障壁(注4)により、商機を失ったことがあるとの回答が前年比20ポイント上昇し62%となった(注5)。

このほか、58%の企業がカーボンニュートラルに取り組んでいると回答した(前年は51%)。課題としては、再生可能エネルギーの入手機会が限られること、政府のガイダンスやベストプラクティスの不足などを指摘し、対応を求めた(注6)。

中国EU商会のイェンス・エスケルンド会頭は「今年の調査で見られたネガティブな傾向は懸念すべきものであり、中国の政策環境の不確実性や地政学的緊張の高まりがもたらす最近の課題と、長年継続している市場参入障壁の双方を反映している」とした上で、「中国が流れを変え、欧州企業が発展し、その潜在力を発揮できるようになるためには、具体的なアクションが必要だ」と指摘している。

(注1)同調査は、欧州のコンサルティング会社ローランドベルガーと共同で2023年2月から3月にかけて実施したもので、570社の企業が回答した。なお、中国ドイツ商会も、6月8日にアンケート調査結果を発表している(2023年6月21日記事参照)。

(注2)特に、医療機器業界では79%の企業が「より困難になった」と回答し、業種別で最も高い値となった。要因としては、中国政府による中国企業に対する直接的な財政支援や税制優遇、研究開発に対するインセンティブ、審査手続きや集中購買調達における不透明性によって、外資系企業が不利な取り扱いを受けたと指摘している。

(注3)「2023年に中国での事業拡大を検討していない」との回答は前年比6ポイント上昇し27%に、「未定」との回答は同9ポイント上昇し26%となった。

(注4)障壁の主要なものとしては、第1に規則や監督管理の不透明性が、第2に予見性の低い立法環境が、第3に市場参入障壁および投資の制限が指摘されている。

(注5)具体的には、新型コロナウイルスの厳格な予防・抑制措置が最も深刻だったとされているが、それ以外の重要な要因として、長期にわたる行政・規制上の障壁や中国政府が戦略的分野において推進している技術の「自力更生」が挙げられている。

(注6)中国においてカーボンニュートラルに取り組む上での中国政府への要望として、再生可能エネルギーへの透明で信頼できるアクセスの提供、環境関連の法規制の運用において外資系企業を公平に取り扱うこと、認証を受けた脱炭素の取り組みに対する補助金や各種インセンティブの提供、産業別のガイダンスや参考となるベストプラクティスの提供などが挙げられている。

(小宮昇平)

(中国)

ビジネス短信 245d9c5471d37b45