南米諸国連合、ベネズエラを含む全加盟国による首脳会合が復活

(ブラジル、アルゼンチン、ボリビア、チリ、コロンビア、エクアドル、ガイアナ、パラグアイ、ペルー、スリナム、ウルグアイ、ベネズエラ)

米州課

2023年06月01日

ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は5月30日、首都ブラジリアで南米諸国連合(UNASUR)会合を開催した。会合には、アルゼンチン、ボリビア、チリ、コロンビア、エクアドル、ガイアナ、パラグアイ、ペルー、スリナム、ウルグアイ、ベネズエラの11カ国の国家元首級が参加した。ペルーのみ、ディナ・エルシリア・ボルアルテ・セガーラ大統領に代わり、ルイス・アルベルト・オタロラ・ペニャランダ首相が参加したが、その他の10カ国からは国家元首が出席した。ベネズエラは、ニコラス・マドゥロ大統領が参加した。

UNASURは2010年代に入ると、加盟国間の政治対立で、組織を牽引してきた各国のリーダーが相次いで退陣。国際会議の開催が行われなくなった上に、複数の加盟国が脱退したため、組織として停滞傾向にあった。ところが、2023年1月にブラジル大統領に返り咲いたルーラ左派政権は、強力なリーダーシップでブラジルを含めた設立当初の全加盟国(12カ国)による首脳会合を実現した。

加盟国の主権を尊重、地域統合とエネルギー転換への取り組みで合意

会合後には、対話に基づく平和と協力を構築し、多様性や民主主義および人権を尊重し、持続可能な開発と法的安定性、国家の主権を守ることの重要性を唱えた合意書(ブラジリア・コンセンサス)に、12カ国が署名した。

ルーラ大統領は会合後の公式記者会見で、気候変動、国際安全保障への脅威、食糧やエネルギー網への圧力、新たな感染症拡大リスク、社会的不平等の拡大といったリスク要因が存在する中で、「多様性に富む参加者が一堂に会したこの度の会合は、互いを知るために役に立つものだ」と、南米諸国の多くの国家元首級が一堂に会したことを成果として強調した。その上で、「私たちは互いの利益のために団結するか、あるいは大国の操り人形になるかだ」と、南米諸国が域内コンセンサスを一致させ、さらに団結力を高めることの重要性についても述べた。

会合では、各国が域内統合、気候変動、エネルギー転換に優先して対応してく旨でも合意した。チリのガブリエル・ボリッチ大統領は「南米は温室効果ガスの排出量が最も少ない地域のうちの1つだが、気候には国境はなく、われわれは団結してこの問題に立ち向かう必要がある。排出量の多い国はより多くの約束事を守らなければならない。共通の認識をもって国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)に参加する必要がある」とし、2025年にブラジル・アマゾナス州の州都ベレンでの開催が決まったCOP30に向け、域内で意識を共有する必要性を述べた。コロンビアのグスタボ・ペトロ大統領も「南米諸国は再生可能エネルギーで有利だ」と述べ、エネルギー転化で域内が世界をリードできる旨を強調した。

なお、会合ではイデオロギーの対立が見られる場面もあった。5月30日付の現地紙「メルコプレス」によれば、ルーラ大統領が、ベネズエラの経済制裁について「西側諸国によって創造された物語だ」と述べたことに対し、ボリッチ大統領は、ベネズエラ情勢の深刻さを強調し、ウルグアイのルイス・ラガジェ・ポウ大統領と共に強い反発を示した。

(辻本希世)

(ブラジル、アルゼンチン、ボリビア、チリ、コロンビア、エクアドル、ガイアナ、パラグアイ、ペルー、スリナム、ウルグアイ、ベネズエラ)

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