オムロンヘルスケア、スタートアップと資本業務提携し遠隔診療サービス提供へ
(インド、日本)
ニューデリー発
2023年05月01日
オムロンヘルスケアは4月18日、心電図解析AI(人工知能)を強みとするトライコグとの資本業務提携を発表した。トライコグは2014年にシンガポールで創業し、インドを中心に医療機器向けに、心房細動の早期発見を目的としたクラウド型心電図解析サービスを開発・提供するスタートアップだ。両者は、インド国内の高血圧患者向け遠隔診療サービスの共同開発に着手し、2024年4月以降にサービス提供を開始する予定だ。
新しい遠隔診療サービスの概要は次のとおりだ。かかりつけ医のアドバイスを踏まえ、希望する高血圧患者は、まずオムロンヘルスケアの通信機能付き心電計をトライコグからレンタルする。患者本人が自宅などで心電計を用いて心電図を定期的に記録すると、同記録データはスマートフォン上の同社アプリを介してデータベースに順次蓄積され、トライコグのAIによる心電図の解析が行われる。解析結果を基に、トライコグの循環器専門医が分析レポートを作成し、異常が確認された場合には速やかにかかりつけ医にも通知されるため、循環器疾患の早期治療が可能となる仕組みだ。
インド内務省の統計によると、年間国内死亡者の最大の死因は循環器疾患で、全体の3割弱を占める。同疾患の主な要因の1つである心房細動は約4割が無症状のため見つかりづらいことに加え、インドでは心電計を導入済みの医療機関が全体の約1割にとどまることから、同疾患の早期発見は容易ではないのが実態だ。
今回の新サービスは、潜在的に心房細動リスクを抱える高血圧患者が、医療機関に直接通うことなく異常の早期発見につながることを目的としたものだ。今般の資本業務提携は、トライコグ最高経営責任者(CEO)のチャリット・ボグラジ氏が、オムロンヘルスケアが循環器事業で掲げるビジョン「脳・心血管疾患の発症ゼロ(ゼロイベント)」に共感したことも1つのきっかけだったという。オムロンヘルスケア広報部の西口恵氏によれば(ヒアリング日:4月25日)、心電計付き上腕式血圧計を遠隔診療サービスにつなげる試みは他国や他疾患でも過去に例がなく、同社にとっても新しい取り組みとなる。
(広木拓)
(インド、日本)
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