米大手小売りのノードストローム、サンフランシスコ市内2店舗を閉鎖予定、小売店の閉鎖相次ぐ

(米国)

サンフランシスコ発

2023年05月09日

米国大手小売りのノードストローム(本社:ワシントン州シアトル)が、サンフランシスコ市内中心部の関連2店舗を今夏までに閉鎖する予定、と複数のメディアが報じている。報道によると、商品をディスカウント価格で販売するノードストローム・ラックの店舗を71日に、ショッピングモール内のノードストロームの店舗を8月末にそれぞれ閉鎖する予定だ。

同社は閉鎖の理由について、従業員宛てのメールで「サンフランシスコのダウンタウンにおける市場のダイナミックスがここ数年で劇的に変化し、顧客の動きや店舗の運営力に影響を与えた」と述べた。サンフランシスコ市内中心部では、新型コロナウイルスの感染拡大により、ユニクロやH&M、ギャップなどの店舗が閉鎖した。CVSやウォルグリーンも、新型コロナ禍で市内中心部の複数店舗を閉鎖している。最近では、キャッシュレスコンビニエンスストア「アマゾン・ゴー」の市内全4店舗が3月末で閉鎖(2023年3月28日記事参照)したほか、ホールフーズも従業員の安全上の懸念などを理由に、4月に1店舗を一時閉鎖した。こうした閉鎖した店舗の多くが現在、空きスペースのままとなっている。

写真 閉鎖された店舗、空きスペースが目立つ(ジェトロ撮影)

閉鎖された店舗、空きスペースが目立つ(ジェトロ撮影)

小売店舗の相次ぐ閉鎖の背景として、1つ目に市内中心部への人の移動量の回復が鈍いことが挙げられる。例えば、サンフランシスコを含むベイエリア地区5郡を結ぶベイエリア高速鉄道(BART)の平日の平均乗降客数は、回復傾向にあるが2023年4月時点で新型コロナ禍以前の2019年同月の4割以下となっている。また、不動産管理システム会社キャッスルによると、サンフランシスコ都市圏のオフィス稼働率は2023年4月26日時点で、2020年2月の水準の44.9%にとどまる。さらに、米国不動産会社CBRE が2023年4月に発表したレポートによると、2023年第1四半期(1~3月)のサンフランシスコにおけるオフィススペースの空室率は29.4%で、新型コロナ禍以降、空室率の上昇傾向が続いている。

2つ目の背景として、窃盗など治安状況への懸念も挙げられる。サンフランシスコ市警察によると、2023年1月1日から4月30日までに発生した犯罪1万5,724件のうち、窃盗が約6割を占める。集団窃盗や若年層の窃盗も少なくない。また、同市住民向けのアンケート結果では、市内の安全性評価は過去20年で最低となっている(2023年4月20日記事参照)。

(石橋裕貴)

(米国)

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