ベトナム首相がG7広島サミットで訪日、外交バランスへの配慮も

(ベトナム、日本、ロシア)

アジア大洋州課

2023年05月26日

ベトナムのファム・ミン・チン首相はG7広島サミット(主要国首脳会議)に参加するため、5月19~21日に日本を訪問した。ベトナムの首脳がG7拡大会合に出席するのは、2016年の日本と2018年のカナダでの開催に続いて3回目となった。

ベトナム政府サイトによると、チン首相はサミット会合のうち、「複合的危機への連携した対応」「持続可能な世界に向けた共通の努力」「平和で安定し、繁栄した世界に向けて」の3つのセッションに参加した。この会場で、ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領とも直接会話を交わした。

日越首脳会談に合わせて円借款で文書交換

チン首相は5月21日、日本の岸田文雄首相と首脳会談外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを実施し、両首脳は2国間や地域・国際場裏で緊密に連携していくことを確認した。ODA関連では、ベトナムの南北高速鉄道や都市鉄道建設、気候変動対応、デジタルトランスフォーメーション(DX)、グリーントランスフォーメーション(GX)、ヘルスケアなどについて、新たな枠組みでのODA提供にかかる議論を進めることで一致した。また、ホーチミン市のチョーライ第2病院や都市鉄道1号線(ベンタイン~スオイティエン)など、現在進行中のODAプロジェクトの進捗加速に向けて調整することになった。

両首相立ち会いの下、林芳正外相とホー・ドゥク・フォック財政相との間で、総額609億8,300万円の円借款3件(注)に関する文書交換も行われた。

G7広島サミット直後にロシア高官とも会談

ロシアの元大統領、ドミトリー・メドベージェフ国家安全保障会議副議長は、5月21~23日にベトナムを公式訪問した。ベトナム政府サイトによると、チン首相は日本から帰国した翌日(22日)に、メドベージェフ氏との会談を実施。今回のベトナム訪問を歓迎するとともに、この訪問は2国間関係を強化する機会になると言及した。双方はエネルギーや石油、科学技術、教育などの分野で協力を促進し、2国間連携を深める方針で一致した。メドベージェフ氏は同日、グエン・フー・チョン書記長、ボー・バン・トゥオン国家主席ともそれぞれ会談している。

ベトナム政府は、G7広島サミットへのチン首相参加と同時期にメドベージェフ氏の訪問を受け入れており、ロシアとの関係性に配慮した対応ともみられる。

(注)外務省の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、新型コロナウイルス感染症対応支援借款(供与限度額500億円)、ビンズオン省公共交通インフラ改善計画(供与限度額62億4,400万円)、ラムドン省農業開発インフラ改善計画(フェーズ1)(供与限度額47億3,900万円)。

(庄浩充)

(ベトナム、日本、ロシア)

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