2023年の世界経済成長率、金融不安受け0.1ポイント下方修正、IMF見通し

(世界)

国際経済課

2023年04月13日

IMFは4月11日、最新の「世界経済見通し」(英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日本語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。世界経済の成長率(実質GDP伸び率)は2022年の3.4%から、2023年に2.8%へ鈍化し、2024年には3.0%に回復すると予測。前回(2023年1月)の予測と比較して、2023年の見通しを0.1ポイント下方修正した。なお、今回の予測は、急速な政策金利上昇の副作用としての金融部門の逼迫が今後拡大しない前提でのベースライン予測に基づく。IMFは「金融部門の混乱による先行き不透明感は高く、リスクは確実に下振れ方向に傾いている」と警鐘を鳴らしている。

IMFのチーフエコノミスト、ピエール・オリビエ・グランシャ氏は、世界のインフレ率は2022年の8.7%から7.0%へ鈍化が予測されるが、抑制のペースが当初予測より遅れている点を指摘した。

2023年の経済成長率を地域別にみると、先進国・地域の景気減速が目立つ一方、多くの新興・途上国・地域の成長は回復している。先進国・地域では、前回見通しと比較すると、0.1ポイント上方修正したものの、ユーロ圏や英国などで成長が大幅に減速し、2023年の経済成長率は1.3%にとどまる見通しとなった。先進国・地域の約9割では、2023年の成長率が2022年比で低下すると予想している。

新興・途上国・地域の成長率は、2023年に3.9%、2024年には4.2%に上昇すると予想する。中国では新型コロナウイルスの影響を大きく受けた2022年と比べて景気が回復し、5.2%へ回復するとみられる(添付資料表参照)。

最近の複数の銀行の経営破綻などにみられる金融不安が一段と高まったと仮定した場合、2023年の世界経済の成長率は、今回予測(2.8%)を下回り、2.5%程度まで鈍化するという代替シナリオも示した。これは、2020年の新型コロナ危機と2009年の世界金融危機を除くと、2001年の世界的な景気後退以来の低い伸びとなる。また、このシナリオ上では、新興・途上国・地域よりも先進国・地域が受ける影響の方が大きく、先進国・地域の成長率は1%を下回る低水準となると予測した。

世界のインフレ率では、各国の金融政策の引き締めによるインフレ抑制の兆しがみられ、2022年の8.7%から2023年は7.0%に鈍化する見込みだが、この予想は前回よりも0.4ポイント高く、2022年1月時点での予想のほぼ2倍となる。コアインフレ率はさらに遅いペースで鈍化し、インフレが物価目標に戻るのは2025年以降となると予想される。

なお、今回の見通しは、下振れリスクの方が大きいとしている。今後の下振れリスクとしては、金融環境の悪化の可能性、ウクライナ戦争の激化による食料・エネルギー価格の急上昇、インフレ率の高止まりを受けた金融引き締めの可能性などを挙げた。

(板谷幸歩)

(世界)

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