ボリッチ大統領がリチウム開発戦略を発表、国家主導の官民プロジェクト推進を目指す

(チリ)

サンティアゴ発

2023年04月28日

チリのガブリエル・ボリッチ大統領は4月20日、国営テレビで国家リチウム戦略外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同戦略は、リチウム生産を国の重要産業として位置づけ、従来の民間主導によるリチウム開発を今後は国家主導による官民プロジェクトとして開発を推進することで、国益を最大化することを目的としている。

具体的な戦略の内容としては、国営リチウム企業(ENL)の設立(注)、ENLによるリチウム開発プロジェクトの主導、リチウム開発のための公的技術研究所の創設、リチウム関連製品の国内製造の促進などが含まれている。

民間企業については、ENLとの共同出資を行う条件付きで開発プロジェクトへの新規参入が可能とされており、あくまでも開発プロジェクトの運営権は国が担うという姿勢が示された。これに伴い、現在、北部アタカマ塩原でリチウム生産を行う特殊植物栄養素・化学製品メーカーSQM(Sociedad Química y Minera de Chile)と米国アルベマールの2社についても言及があった。現行の採掘契約について、前者は2030年まで、後者は2043年までと定めている。ボリッチ大統領は、国家はこれら既存の契約内容をあくまでも尊重するものの、現行契約終了前にこれら2社の採掘事業のコントロール(事業運営権取得)を目指して協議を推進する方針を明らかにしている。

同戦略の発表を受け、業界からはさまざまな声が上がっている。チリ生産商工連合(CPC)のリカルド・メウェス代表は「リチウム産業について国家が主導権を握るということは、民間部門にとってはいいニュースではない」とコメントし、起業家らは困惑していると言及。一方で、在チリ米国商工会議所(AmCham)のパウラ・エステベス・ゼネラルマネジャーは「国家リチウム戦略は、チリと米国が既に共有している深い絆と価値観を強化すると確信している」と言及し、民間部門の参加を部分的に認めた政府の発表を肯定的に評価している。

(注)設立法案が2023年下半期に国会に提出予定。

(岡戸美澪)

(チリ)

ビジネス短信 537f47cda0e73106