米EV税額控除、対象車両は米系メーカーの22モデルのみ

(米国)

ニューヨーク発

2023年04月18日

米国の内国歳入庁(IRS)は4月17日、インフレ削減法(IRA)に基づいてクリーンビークル(注)の購入者が受けられる税額控除について、4月18日以降の対象車両22モデルを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(添付資料表参照)。このうち、14モデルは最大の7,500ドル、残り8モデルは半額の3,750ドルの税額控除の対象となる。車両リストはエネルギー省のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに掲載しており、随時更新する予定だ。

今回発表された22モデルは、2022年8月17日に発効した「北米での最終組み立て要件」と2023年1月1日に発効した「車両の希望小売価格の上限」「購入者の所得上限」の要件を満たした上で、4月18日から適用する「バッテリー関連の調達価格要件」の全部またはいずれかを満たした車両となる。4月17日までの対象車両は41モデルだったが、日産「リーフ」、フォルクスワーゲン「ID.4」、リビアン「R1T」「R1S」のほか、BMW、ボルボ、現代などの外国メーカーを中心に、23モデルが対象車両から外れ、新たにゼネラルモーターズ(GM)とフォードの計4モデルが追加された。「バッテリー関連の調達価格要件」の適用開始に伴い、6モデルが対象外となったフォルクスワーゲンは「われわれは税額控除の対象となるかを判断するために、サプライヤーからの適切な書類を待っているところだ」と述べ、「ID.4」が税額控除の対象になることに「かなり楽観視している」との見解を示している(ロイター4月17日)。

自動車メーカーやバッテリーメーカーは税額控除の要件を満たすため、続々と米国内での生産施設の設立計画を発表している。日本はバッテリー用重要鉱物の調達価格要件となっている自由貿易協定(FTA)締結国と同等の扱いとなるとみられており(2023年4月3日記事参照)、今後EUも日本に追随すれば、税額控除の対象車両が広がる可能性は高い。一方、「バッテリー関連の調達価格要件」は年々厳しくなるように設定されていることから、年を追うごとに対象外となるモデルも増加するとみられる。

今回発表の対象モデルのうち、低価格帯のGM「ボルトEV」の希望小売価格は2万6,500ドルで、税額控除が適用されると手頃感がぐっと増す。しかし、希望小売価格が5万ドルを超えるモデルも多く、共和党議員からは、バイデン政権が国民の経済的現実を無視している証拠という声も聞かれる。米国上院環境・公共事業委員会のシェリー・ムーア・カピト少数党筆頭理事(ウエストバージニア州、共和党)は「2022年の電気自動車(EV)の平均価格は約6万5,000ドルで、米国の46%の家庭の世帯収入を上回っていた」と述べ、政権を批判する姿勢を示している(政治専門紙「ポリティコ」4月17日)。

(注)バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の総称。

(大原典子)

(米国)

ビジネス短信 4053d76a95d8fb58