日独が初の政府間協議、ビジネス界からも日本との連携に期待
(ドイツ、日本)
ベルリン発
2023年03月22日
ドイツのオラフ・ショルツ首相は3月18日に訪日し、岸田文雄首相との首脳会談、および初となる日独政府間協議などを行った(ドイツ連邦政府発表、日本外務省発表)。2022年4月に次いで首相として2回目となる今回の訪日では、ロベルト・ハーベック副首相兼経済・気候保護相、クリスティアン・リントナー財務相、アンナレーナ・ベアボック外務相、ボリス・ピストリウス国防相、ナンシー・フェザー内務・地域相、フォルカー・ビシング・デジタル・交通相の6人の閣僚のほか、大手ドイツ企業の関係者も同行した。
日本とドイツは、いずれも国際志向の革新的な工業国として、強固な世界経済や貿易関係と、原材料の輸入に依存している。これらを背景に、政府間協議では、経済安全保障が中心的な議題となった。特に、(1)重要インフラの防護(サイバーセキュリティーや障害監視の仕様など、機密領域の適切な保護に関する連携)、(2)サプライチェーンと貿易ルートの構築、(3)将来のエネルギー供給の確保(水素分野での協力、洋上・陸上風力発電と太陽光発電の拡大推進など)について、日独の緊密な連携に関する意見交換が行われた。終了後、共同声明(和文仮訳、ドイツ語)が発表された。
ドイツでは、新型コロナ危機とロシアによるウクライナ侵攻により生じた、サプライチェーンの混乱やロシアからの天然ガス輸入停止など、特定地域への経済的な依存度が高い場合にもたらされる困難が浮き彫りとなった。ショルツ首相は、ドイツ経済紙「ハンデルスブラット」(3月17日)のインタビューで「日本は原材料を確保するための戦略的アプローチを追求してきた」と指摘。エネルギーや重要鉱物などの供給を、官民の緊密な連携により確保している日本の戦略からドイツは学ぶことができる、との見解を示していた。なお、重要鉱物の供給の確保については、上述の共同声明で、日本のエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とドイツの連邦地球科学・天然資源研究所(BGR)の連携が合意された。
ドイツのアジア政策の日本シフト、ビジネス界でも日本への期待高まる
ショルツ首相就任後の最初のアジア訪問先が、最大の経済パートナーである中国ではなく日本だったこと、さらに今回の訪日には6閣僚を同行させたことなど、ドイツメディアでは、現連立政権のアジア戦略における日本重視への転換が顕著と報じられている。
経済界からも日独の関係強化に対する期待の高まりが見て取れる。ドイツ機械工業連盟(VDMA)は3月17日、日独政府間協議に先立ち声明を発表。声明では「気候変動対策や原材料調達体制の強化などの課題について、日独間の協力を深める絶好の機会」と述べるとともに、機械・プラントエンジニアリング分野では、ドイツの機械輸出先として日本は20位内に入っていないため、日独関係の深化による輸出拡大への期待を寄せた。
(中村容子)
(ドイツ、日本)
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