欧州産業連盟、EU電力市場改革に向けて政策提言書を発表

(EU)

ブリュッセル発

2023年02月22日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は2月20日、EUの電力市場改革についての政策提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委員会は、再生可能エネルギー(再エネ)への本格的な移行を視野に入れた電力市場改革案を3月に発表する予定だ(2023年1月24日記事参照)。

同連盟はまず、グリーン化を推進しながら、単一市場の深化を通じて競争力を強化することが、欧州が喫緊に取り組むべき課題であり、電力市場改革における中核的な原則とすべきだと強調。欧州での低炭素技術の開発促進には安価な再エネの十分な供給や、企業が必要な投資を行える適切な条件づくりなどが必要だとした。また、電力市場改革にあたって、加盟国ごとに異なるエネルギーミックスを十分に考慮した包括的な影響評価が必須だと述べた。

その上で、エネルギー危機のさなかにあって行う今回の改革が的を絞ったものとなるために、以下の5点について優先的に考慮すべきだと提言した。

  1. 供給の安定強化:電力生産については引き続き市場本位のアプローチを取り続けるべきだが、補助金や長期の電力購入契約(PPA)によることが多かった同市場における新たな電力源確保に向けた投資のあり方や、バックアップとなる再エネ以外の手段にも十分な投資を確保することなどを検討する。
  2. 域内の電力市場統合の推進:電力網や連系線など必要なインフラ整備に大規模な投資を行い、加盟国間のエネルギー取引を推進して電力市場の統合を進めることで、供給のさらなる安定を図る。また、多くの加盟国でガス価格が電力価格に影響を与えていることを考慮し、ガスについても市場統合を検討する。
  3. 長期契約の推奨:価格決定メカニズムの変更を検討する前に、PPAなど長期契約を推奨することで、ガスと電力の価格連動の切り離しを促す。法人向けのPPAを推奨するためには、信用保証といった取引先リスクを担保する金融手段を提供する。また、差額決済契約(CfD、注)については、引き続き加盟国レベルで任意で活用することとし、その機能などについて再検証する。
  4. 需給バランス確保に向けた投資を推奨:価格の安定や市場の透明性確保に向けて、今後ますます必要となる再エネに特化した貯蔵技術や、供給または需要側の双方が需給バランスを維持できる技術への投資、さらに供給、需要側が需給の変動に対応することにインセンティブを提供する。
  5. 消費者のエンパワーメント:例えば、プロシューマー(生産消費者)としての企業の役割を強化するために、企業間の協力を推奨し、同じ産業クラスターやバリューチェーンに属する企業が再エネ生産や消費、余剰売電を共同で行えるようにする。また、消費者が幅広い選択肢から供給元を選べるようにする。

(注)契約期間(通常15年)の間、入札で決めた固定価格と市場価格の差額を政府が補填(ほてん)する仕組み。

(滝澤祥子)

(EU)

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