EU、ユニパーとパーストープの共同プロジェクトに9,700万ユーロを出資

(ドイツ、スウェーデン)

デュッセルドルフ発

2023年01月27日

ドイツのエネルギー大手ユニパーは1月19日、欧州気候・インフラ・環境執行機関(CINEA)が運営するイノベーション基金から9,700万ユーロの出資を受けると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。出資を受けるのはスウェーデン化学大手のパーストープ(Perstorp)と共同実施するプロジェクトで、グリーンメタノール(注1)の生産施設に対するもの。化学産業での化石資源の利用から再生、かつバイオ原料への転換を目指す。欧州の化学産業におけるカーボンニュートラル(炭素中立)の達成に大きく貢献すると期待される。

出資対象となる施設では、グリーンメタノールの生産を行う。その際、パーストープの現在の事業から回収された大量の二酸化炭素(CO2)やその他の残留物を利用するほか、新規設置する設備からのバイオガスや大型電解槽の水素を利用する予定。なお、使用するエネルギーはすべて再生可能エネルギーで賄われる。同プロジェクトはグリーンメタノールの大規模な生産を、CO2の回収・有効利用(CCU)などを組み合わせた方法でおこなう世界で初の施設となる予定。本プロジェクトで採用するCCUその他の技術の効果により、従来のメタノール生産方式に比べ、温室効果ガス(GHG)排出量を123%削減する(カーボンネガティブ、注2)と予想される。同プロジェクトにより、パーストープは、同社が欧州で化学製品の原材料として使用する、年間20万トンの化石原料由来のメタノールの完全な代替を目指している。また、この施設がフル稼働した場合、年間約50万トンのCO2排出量を削減できる見込みだ。

メタノールは化学産業において最も重要な原料の1つだが、これまではグリーンメタノールの競争力のある供給企業は存在しなかった。このため、今回の施設は多くの産業のバリューチェーンに幅広く影響を与え、欧州の輸入化石燃料への依存脱却に貢献できるという。大規模な生産は2026年末までに開始する予定。

なお、CINEAはEU排出量取引制度(EU ETS)におけるCO2排出枠の競売の収入を財源としており、イノベーション基金は企業や官庁に次世代の低炭素技術への投資に向けた財政的インセンティブを与えることを目指す。このほか、EUの企業を世界的技術リーダーとするため、先行者利益の構築も目的として掲げている。同基金はCINEAにより実行され、欧州投資銀行(EIB)が、有望だが十分に成熟していないプロジェクトに開発援助を提供する。CINEAは現在、16カ国でプロジェクトを52件実施している。

(注1)製造過程でCO2を排出しないメタノール。

(注2)CO2をはじめとするGHGの削減・吸収量が排出量を上回る状態のこと。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ、スウェーデン)

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