2023年のGDP成長率予測は1.3%、1月から基礎食料品のゼロ税率を実施

(スペイン)

マドリード発

2023年01月05日

スペイン中央銀行は1220日に発表したマクロ経済予測で、2023年の実質GDP成長率を1.3%とし、2022年の4.6%から大幅に減速する見通し外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを示した(添付資料表参照)。

同予測によると、ウクライナ情勢によるエネルギー価格高騰やインフレ率上昇を背景とした2022年後半の景気減速は、2023年に入ってからも続き、欧州をはじめ世界経済の低調の影響を受ける。しかし、春以降はエネルギー市場の緊張とインフレ圧力が緩和し、企業の実質所得と信頼感、外需が段階的に回復。EU復興基金のプロジェクトが本格的に執行され、サプライチェーンの混乱が解消に向かう。それによって経済は徐々に勢いを取り戻し、2024年のGDP成長率は2.7%となると予測。GDP成長率は、2023年の終わりから2024年初めごろに、新型コロナ禍前のレベルに回復する見通しとした。

中銀は、上記予測の理由として、政府が導入したエネルギー危機への施策とインフレ抑制策が2023年末まで継続することを挙げている。2023年のインフレ率(消費者物価指数上昇率)は前年比3.5ポイント減の4.9%まで低下するが、2024年は抑制策が終了するため、3.6%の高止まりを予想している。

スペイン政府は1227日、ウクライナ情勢を受けた新たなインフレ抑制策を閣議承認した。20223月と6月に続く第3弾の目玉は、食料品の減税だ。11日からパンや牛乳、青果類など基礎食料品の付加価値税率を従来の4%から0%に、オリーブ油とパスタ類の同税率を10%から5%に引き下げた。食料品減税は、630日まで、またはコア指数(注)が5.5%を下回った段階で終了する時限的措置となる。

また、電力・天然ガスの付加価値税率と電力の物品税率の引き下げ、家賃改定率の規制(上限2%)、公共交通機関の利用料金の補助など、既に実施済みの措置も2023年末まで延長した。他方、ガソリンなど燃料価格1リットル当たり0.2ユーロの割引措置は2022年末で打ち切りとなり、今後は輸送業や農業、海運業、漁業などの事業者のみを対象とした割引制度となる。

2023年は選挙イヤー

スペインでは、20235月に統一地方選挙、年末ごろに総選挙の実施が予定されるほか、下半期にはEU理事会(閣僚理事会)の議長国に就任するなど、同国にとって政治的に重要な年となる。

(注)消費者物価指数上昇率で、変動の大きいエネルギーと生鮮食品を除いた指数。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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